創業初期から関係作り。3メガバンクがスタートアップ支援を拡大する理由
3メガバンクがスタートアップの支援策を拡大している。三井住友銀行は産学官金が成長期の企業を支援する枠組みを設けたほか、グループの信託銀行が新規株式公開(IPO)後の証券代行業務を始める。三菱UFJ銀行はオンラインで商談を創出する仕組みを構築した。みずほ銀行は大企業とスタートアップの連携支援を拡充中だ。いずれも創業初期から関係を作り、銀行・信託・証券をはじめとした各グループ企業(エンティティー)が成長段階に応じた金融やサービスを提供し、収益化する狙いがある。
三井住友銀行の新しい枠組みでは、SMBC日興証券、SMBCベンチャーキャピタル(東京都中央区)など各エンティティーと大企業や地方自治体、大学などが連携して成長期のスタートアップを支援する。大企業と協業する機会の提供や金融支援、セミナーを通じて成長を後押しする。
三井住友銀は同事業単体の収益には強くこだわらず、企業のライフサイクルを通じた収益機会に重きを置く。銀行の融資やベンチャー(VC)のエクイティ・ファイナンス、IPOの主幹事証券、IPO後の証券代行などだ。グループのSMBC信託銀行は12月に証券代行業に乗り出す。三井住友銀から紹介を受け、新規上場会社の株主名簿管理や株主総会の運営支援などの業務を行う。
三菱UFJ銀行はスタートアップ支援の専門部署が、数年で最重点支援先を現在比2倍の600社程度に増やす考えだ。同行はスタートアップを含む成長支援として、顧客同士のオンライン商談サービスを始めた。定時オンライン商談会とは異なり、常時利用可能として利便性を高めた。12月には機能を拡充し、商談先の発掘に人工知能(AI)を使う。
みずほ銀行は大企業向けにスタートアップの技術やM&A(合併・買収)情報を案内するサイトを立ち上げた。開始から1年半ほどで大企業367社が利用する。また、大企業主催のピッチイベントの運営を支援し、スタートアップとの連携を促している。
各行の施策の背景には、現在の起業ブームやIPO熱がある。東京証券取引所によると、2021年上期(1―6月)の国内新規上場会社は59社。前年同期から21社増え、07年同期以来14年ぶりの高水準だった。各国の金融緩和策などの中、21年下期も同様の水準で推移する見通しだ。銀行グループ一体のスタートアップ支援は今後も続く。ただ、各エンティティーで支援先企業の評価が分かれることも多く、組織を横断して束ねる強い統率力が、より重要になってくる。