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ドイツでのIoT、ロボットの社会実装…世界の最新動向

ロボット革命国際シンポジウム「ロボット革命の実現に向けて」

社会がロボットを受け入れる際のルール


 セッション4ではロボットの社会実装に向けたルール作りが討議された。米サンフォード大学付属カンバーランド法律学校のウッドロウ・ハートゾグ准教授は米国のロボット法の動向を解説。イタリア聖アンナ大学院大学バイオロボティクス研究所のパオロ・ダリオ教授はロボットを実生活に導入して試験する実装手法を紹介した。

 ウッドロウ・ハートゾグ准教授は米国のドローン自動運転車と当局との議論の動向を解説した。米国でもコンシューマーロボットの監督をどの省庁が担うか、該当する機関がないことを説明。連邦取引委員会(FTC)なら分野横断的に指導できるのではないかと提案した。

 「ドローンは航空当局、自動運転車は交通当局など、政策がパッチワークではいけない。ロボット法は省庁横断的に検討すべきテーマだ。技術者だけでなく社会学や倫理学、心理学の専門家を交えた深い議論が必須」という。

 パオロ・ダリオ教授は伊トスカーナの街(人口約5000人)で生活支援ロボットの実証試験を重ねてきた。ゴミ回収ロボや案内ロボなどを実際に導入して、医療機関や役所、生活者らがロボットの扱い方や共存の仕方を街ぐるみで学んでいる。

 パオロ・ダリオ教授は「ロボットは研究室から出て、事業性や法的問題など現実の問題を解いていかなければならない」と説明する。この街を「リビングラボ」と称して、たくさんのステークホルダーと、ロボットやそのビジネスモデルをデザインする場として運用している。同時に社会側のロボット受容策を検証する場にもなる。

 14年にはリビングラボの知見を基にロボット法や倫理のガイドラインをまとめ、公開している。パオロ・ダリオ教授は「強すぎる法制度はイノベーションを萎縮させる。まずは住民がロボットになれ、ロボットを信頼することが重要。ドローンは規制対象だが、生活支援ロボはまだまだ。各ロボットの状況に応じた対応が必要」と指摘した。

日本での争点は?


 日本からはリバーシティ法律事務所の南部朋子弁護士・弁理士とサイバーダインの山海嘉之社長、インテルの野辺継男戦略企画室ダイレクター、慶應義塾大学の新保史生教授が参加した。野辺ダイレクターが人工知能(AI)の進化やIoT化の動向を紹介。

 南部弁護士が「日本ではロボットは法律上の権利義務の主体にはならない」など、ロボットは「物」として扱われていることを解説した。そこで新保教授がロボット法の基礎となる8原則を提案。山海社長は「規制がある既存の分野ではリスクとベネフィットを秤にかけられる。だがプログラムの自動生成など、自分で学習し適応するAIはリスクを評価できず、新しい対応法が必要になる」と指摘した。

 現行法が機能している領域と新領域など、対応策はそれぞれ別のアプローチになるだろう。技術と法、信頼、どのアプローチがベストなのか、幅広い分野の専門家と一般市民が考えていくことが求められる。
(文=石橋 弘彰、小寺 貴之)
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昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボット革命イニシアティブ協議会が発足し9カ月。今後もこういったシンポジウムや交流会が継続的に開催されることも、「世界を視野に入れた連携」につながるかもしれません。

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