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ドイツでのIoT、ロボットの社会実装…世界の最新動向

ロボット革命国際シンポジウム「ロボット革命の実現に向けて」
 経済産業省、ロボット革命イニシアティブ協議会は15日、東京・内幸町のイイノホールでロボット革命国際シンポジウム「ロボット革命の実現に向けて」を開いた。インダストリー4.0(I4.0)やIoT(モノのインターネット)、ロボット利用推進の状況などについて、日本をはじめドイツ、イタリア、米国などから産官学の担当者が参加し、講演やパネル討論を行った。来場者約500人が最新の状況報告へ熱心に耳を傾けた。

 冒頭、ロボット革命イニシアティブ協議会岡村正会長より挨拶があり、「本会は発足から9カ月ほど経ち、具体的なアクションへ踏み出す時期を迎えた。I4・0などの世界の取り組みを知り、国際的な連携に広げて行くことが重要と認識して欲しい」と話した。

ドイツ産業と日本産業の共通点


 「日本は高度な生産技術を持ちながら、それを稼ぐ力に結びつけることが苦手だった。稼ぐ力への結びつけこそ重要」―経済産業省の糟谷敏秀製造産業局長はキーノートスピーチでこう話した。国内の企業では、経営者が「ビッグデータ、IoT、AIを活用しろ」と指示して、社員が「どう採り入れて良いか分からず困った」というケースがある。それらは手段であり、仕事のやり方を変えずして導入しても無駄になる。トップが経営課題の解決への手段と認識し明確な方針を打ち出さない限りI4.0への対応は難しい。

 また「I4.0対応なんてとっくに対応している」という声も多い。だが、さらなる付加価値向上につながるなら、もっと活用できるのではないか。サプライヤーとの連携やさらなる生産性向上が見込めるかも知れない。

 I4.0の動きは、これからチャンピオンとなる企業が業種事に出てきて、そのやり方がグローバルスタンダードになる。勝ち残りへ自ら積極的に動くことは良いことだ。取り組めば、さらなる価値が眠っている場所がわかるかも知れない。日々のビッグデータに価値が眠っている。

 続くキーノートスピーチでは、ドイツ経済エネルギー省のヴォルフガング・ショレメート産業政策局長が講演。ドイツと日本の産業は同じ環境下にある。工業セクターが強く、国民経済に大きい役割を果たす。財政状況も悪くない。だが、改善を続ける必要があり、投資先となる成長分野も求められる。I4.0などの変革はその投資先となりうる。

 IoTやロボット革命といった技術的な変革が起こると、働き方へ影響を及ぼす。I4.0では、機械同士がコミュニケーションして生産を高度化する。そのコミュニケーションに従業員が入っていけなくなると良くない。従業員の教育体系なども変革しないとならない。

 ドイツでのI4.0の取り組みでも課題が出ている。500億以上のデバイスがつながり、コミュニケーションをするには標準化が必要。さらにビッグデータの扱いでは通信環境などの安全性の確保が求められる。また、法規制もデジタル化前に制定されたものばかり。デジタル化に対応した法整備も必要となる。

 米国はソフトやデータ処理、日本は製造技術と、各国が得意分野を持つ。これから起こる破壊的変革では、持ち味を生かして競合しつつ、変革に対応できるよう国際的な連携が不可欠になるだろう。

ドイツにおけるI4.0最前線


 セッション1では、I4.0の最新事例について2件の発表があった。

 ドイツにおける新たな試みについて講演したのはヘニッヒ・バシティエン事務局長。ドイツではデジタル革命への挑戦が重要なテーマとなり、プラットフォーム・インダストリー4.0が立ち上がった。

 プラットフォーム・インダストリー4.0の活動内容はいくつかある。一つは社会でのプレゼンス向上。I4.0がチャンスを秘めているという理解を促す。また、調整役として国際交流を進めることも重要だ。政府や企業とも交流して議論をまとめ、解決策を提示する役割もある。

 また、中小企業の参画を促すこともミッション。商工会議所と協力し事例の紹介なども行う。さらに、技術のニーズへ応えることも活動の範疇だ。I4.0の最新の動きを把握し、何か聞かれたらちゃんと応えられるようでないといけない。コミュニティーの透明性を高めて参加を促すことも大事だ。

 現在、200を超える企業や100以上の団体が参画している。標準化、研究・イノベーション、ネットワークシステムの安全性、法的枠組み、雇用という五つのワーキンググループが議論を進めている。

 クカのI4.0担当者、ハインリッヒ・ムンツ氏からはより具体的な解説がなされた。I4.0の範囲は狭く、生産面に特化している。一方、IoTは広義だ。建物、エネルギー、ヘルスケア、輸送、小売り、都市など多くの分野を包括する。その一つの生産、ここがI4.0と同義になる。I4.0は一つの分野に過ぎない。

 リファレンスアーキテクチャモデル4.0(RAMI4.0)についても説明したい。IoT全体をカバーしようという米国のIICと違い、マシンツーマシンのコミュニケーションを対象とする。これまた範囲が狭くプロトコルが比較的容易に確立できると思われる。また、データ交換は手段であり、サービスを目的とする。配送や生産などで役立つものだ。

 データは21世紀の石油と言われる。ドイツではシーメンスがデータを集めクラウドへ上げていく。端末から情報がエッジサーバーに行き、そこからパブリック・プライベートクラウドへ集まる。この流れの中で付加価値を生み出すことができれば良い。クカはクラウドからデータを取りロボットをコントロールするといったことができれば付加価値を生み出せる。
<次ページ:ロボットの社会実装に向けたルール作り>
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昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボット革命イニシアティブ協議会が発足し9カ月。今後もこういったシンポジウムや交流会が継続的に開催されることも、「世界を視野に入れた連携」につながるかもしれません。

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