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東北大が研究力強化へ稼働する「次世代型研究者DB」の全容

東北大学は、産学共同研究や論文指導、担当講義など研究者の多様な活動を学外の論文情報データベース(DB)と合わせて分析できる「次世代型研究者DB」を構築した。形式がさまざまな学内DBを連動することで、新たな入力負担なしに研究者や部局の状況を評価、可視化できる。4月から本格稼働し、研究力強化や経営戦略のデジタル変革(DX)につなげる。

東北大、研究者の多様な活動分析 学内連携DB来月稼働

米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウド「AWS」を利用して構造化データ、非構造化データを一元的に保存できる「データレイク」(貯水湖)を構築した。ビジネスインテリジェンス(BI)ツールで可視化して、エビデンスベースの評価や戦略立案を行う。

新DBは、学内の多様な情報DBを自動的に集積、連動し分析に活用できる。例えば財務会計DBで引き出せる研究費の間接経費からは、研究者の本部への貢献度が分かる。学務教務DBでは研究者が指導した学位論文や留学生、担当科目の数などが分かる。人事給与DBを使って「人件費当たりの論文数」も出せる。さらに共同研究先の企業名で検索し、関わっている全学の研究者のリストアップも可能。海外出張記録を使えば、研究者の国際ネットワークも把握できる。

東北大がこれまで使っていた市販DBは、入出力データの形式が固定化されており使いづらかった。また研究者に入力を依頼するためバラつきがあり、データ形式や管理手法が部局で違うため比較できないなどの課題があった。そのため研究者評価は学外の研究論文DBに偏りがちだった。

日刊工業新聞 2023年3月30日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学の研究者に関わるDBは国内なら、JSTの研究者DB「リサーチマップ」、国立情報学研究所が運用する科研費のDB「KAKEN」があり、海外の論文情報ではエルゼビア社の「スコーパス」、クラリベイト社の「ウェブ・オブ・サイエンス」などがよく使われる。しかしこれらの内容は、学術論文を中心とした研究業績に限定される。対して今回のDBなら、社会連携や教育といった活動の実績も 一括して把握できる。一般社会にとっても大学組織にとっても重要な、教員の多面的な貢献を評価できる点が大きい。パッケージ販売しているものではないが、他大学でも同様のDBが構築可能だというので、ぜひ参考にしてほしい。

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