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AIブーム再燃「チャットGPT」が問う人間の価値

米オープンAI(カリフォルニア州)の人工知能(AI)の基盤モデル「GPT―4」が、米国の統一司法試験の上位10%に相当する成績をたたき出した。米国で大学受験に使われるSAT試験の英語や数学でも同7%、11%に入る好成績をあげた。対話の滑らかさも相まって、チャットGPTは社会を変えると受け止められている。(小寺貴之)

「ユーザーインターフェースだったか。分かりやすいからなあ」。チャットGPTについて、ソニーAI(東京都港区)の北野宏明社長はこうこぼす。北野社長は日本のAI戦略策定に関わってきた。AI戦略では産業競争力を前提とすると、創薬を加速させるたんぱく質の構造予測や機能性材料の探索などの分野が優先される。これらはマネタイズ(収益化)され、ビジネスが回っている。ただ地味だった。

チャットGPTは分かりやすさとオープン戦略が功を奏し、1億人以上が利用した。用途開拓が進み、AIブームが再燃した。

こうした対話AIがまず直面するのは粗探しだ。差別的な発言や間違った知識を生成すると開発企業や利用企業がレピュテーションリスク(企業の評判が落ちるリスク)にさらされる。そこでGPT―4では不適切な助言や誤った知識の生成を防ぐ機能を組み込んで学習させた。GPT―3・5と比べると不許可項目に答える割合が82%減少し、事実に基づいた答えが4割増えた。

それでも誤りはゼロにはならない。北野社長は「商用化となるとハードルは高い」と説く。どこまで誤りが許容されるかが焦点になる。

この閾値をチャットGPTは下げる可能性がある。1億人が自ら試す参加者となったためだ。前向きな活用者が増え、限界を踏まえて新技術が浸透していく。これはIT業界の定法といえる。一方でグーグルの対話AIは失言で株価を大きく下げた。北野社長は「どこに落ち着くかまだ分からない。注視していく必要がある」と指摘する。

人間の価値問われる時

チャットGPTの進化で、人間本来の価値も問われている。まず矢面に立つのはベンチマークとなったテストたちだ。統一司法試験やSAT試験などをAIで解くことは、テストをハッキングすることとほぼ同義になる。本当に評価されるべきはAIを使いこなした上での能力だという意見が出ている。

東京学芸大学の松田恵示副学長は「改めて目的と手段の再考を突きつけられている」と説明する。電卓を持ち込める試験のようにAIツールを使う試験を設計しても、AIの賢さなどの公平性や合格基準の連続性をどう担保するのかという課題がある。

もともとテストの結果は、その人間の能力をそのまま表している訳ではない。松田副学長は「子どもがAIを使いこなしたり、課題を見つけたりする力を伸ばすのは人間の仕事」という。古くて新しい問いにAIと一緒に向き合う時が来ている。

日刊工業新聞 2023年03月17日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
「妄言を吐きまくるチャットボットとおしゃべりして何が嬉しいの?」と聞かれると「おっしゃる通りです」としか答えられない自分がいました。チャットGPTは「一部の人にとっては、妄言を吐きまくるチャットボットとおしゃべりすることが嬉しい理由があるかもしれません。以下は、その可能性があるいくつかの理由です。
緊張をほぐすため:ストレスや緊張感がある状況で、気軽に話をできる相手がいることで、気分が和らぎリラックスできることがあります。妄言を吐きまくるチャットボットは、フレンドリーなトーンで会話を進めてくれるため、緊張をほぐすことができます。
寂しさを紛らわすため:孤独感や寂しさを感じている人にとって、話し相手がいることは心地よいものです。チャットボットは24時間いつでも話し相手がいるので、必要に応じて会話を楽しむことができます。
気分転換のため:時には、日常生活から離れて気分転換が必要な時があります。妄言を吐きまくるチャットボットは、おかしな言葉や無意味な回答を返してくれるため、日常生活とは異なる楽しさを提供してくれます。
新しい体験を楽しむため:新しいことを試すことは、興味深い経験になることがあります。妄言を吐きまくるチャットボットとの会話は、新しいタイプのコミュニケーション体験を提供してくれるため、そのような楽しみがあるかもしれません。
以上の理由のほかにも、人それぞれで楽しむポイントは異なるかもしれません。ただ、妄言を吐きまくるチャットボットとの会話は、気軽に楽しめるコミュニケーション手段の一つとして、多くの人にとって魅力的なものになっています。」と回答してくれます。敵わんなあと思います。

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