先端技術と地域振興融合…東日本大震災12年、福島中小が挑む新ビジネス
11日、東日本大震災の発生から12年を迎えた。福島県の中小企業は水素や飛行ロボット(ドローン)といった先端技術と地域振興を融合した新しいビジネスに挑む。大津波や原子力発電所の事故からの復興にとどまらず、観光や農業が地域経済を支えるほかの地方にも水平展開できそうだ。
郡山観光交通「水素ツーリズム」
孫の手トラベル(福島県郡山市)の観光ツアー「フードキャンプ」は、バスで福島県内の農場や酒蔵を巡り、採れたての食材をシェフが調理して提供する。参加者は農場に設営したテーブルで生産者と一緒に食事を楽しむ。ほぼ月1回のペースで開催しており、首都圏から観光客を呼び込んでいる。
孫の手トラベルの親会社、郡山観光交通(同)の山口松之進社長は「(写真をネット上に投稿する)“インスタ映え”が参加の動機でも良い。生産者の思いや地域を知ってほしい」と語る。
新たに「水素ツーリズム」を企画中だ。燃料電池(FC)を搭載した「FCキッチンカー」をツアーに同行させて料理を提供する。水素を燃料に走行し、停車時も水素で発電して冷蔵庫や調理器を稼働させる。通常のキッチンカーは電気を発電機に頼るが、運転音が響いて排ガスも出る。FCは静かで排ガスも、二酸化炭素(CO2)も排出しない。
“水素”を掲げるが、山口社長は「普通の観光客が新鮮でおいしい物を食べてから、環境問題に関心を持ってほしい」と期待する。また、企業や自治体職員を対象とした研修ツアーも企画する。県内には水素や再生可能エネルギーの研究拠点があり、「脱炭素ツアーもできる。全県を“メニュー”にした提案ができるのが中小企業の強み」(山口社長)。
FCキッチンカーは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で開発しており、3月中にも公開できそうだ。水素ツーリズムは環境省のFS(事業化調査)委託業務として事業化に挑む。