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高齢者念頭も…関空リノベの目玉「自動運転モビリティー」が若者に利用されている理由

自動運転・返却で人件費減
高齢者念頭も…関空リノベの目玉「自動運転モビリティー」が若者に利用されている理由

ロボットの動線は人通りが多いレストランエリアを避けて設定されている

最新設備で世界をお出迎え―。関西エアポート(大阪府泉佐野市、山谷佳之社長)は2025年開幕の大阪・関西万博に向け、関西国際空港(関空)第1ターミナルの大幅なリノベーションを行っている。10月にオープンした新国内線エリアで働くのが、WHILL(東京都品川区)の自動運転モビリティーだ。高齢者の補助を念頭に導入した同ロボットだが、若者にも多く利用され、リノベーションの目玉として存在感を高めている。(大阪・大川藍)

保安検査後の広場では、1人乗りの自動運転ロボットが1台、搭乗者の利用を待ち受けていた。誰でも無料で乗ることができ、数分先の搭乗口まで人や手荷物を運んでくれる。降車後はロボットが元の位置に自動返却され、次の利用客を待つ仕組みだ。「思った以上に好評で、大学生の利用者も多い」(関西エアポート)といい、長距離の歩行に不安がある人だけでなく、荷物の多い旅行客などが気軽に利用する。

関空の国内線はこれまで、一番近いところでは保安検査場を出てすぐの位置に搭乗口があり、その利便性の高さが利用客に親しまれていた。一方、万博に向け国際線を強化する中、国内線のレイアウトを大幅に変更。搭乗口にたどり着くまで、近いところでも歩いて数分を要するようになった。

「他の国際空港に比べ国内線の利便性は高い方だが、従来の関空と比較し搭乗口が遠いと感じるお客さまもいるのでは」(同)との懸念から、少しでも便利に感じてもらうため、移動用ロボットの導入を決めたという。

保安検査場後の広場で利用客を待つ自動運転ロボット。1人乗りで、誰でも気軽に利用できる

課題となったのがロボットの動線だ。保安検査場から搭乗口へ向かう間には飲食店や土産物のエリアがあり、「店付近は人の動きが読みづらくなるため、頻繁にモビリティーが止まると余計にお客さまのストレスとなってしまう」(同)。

そこで同社がとったのが、レストランエリアを挟んで稼働範囲を二つに分ける方法だった。「買い物を楽しんでいただく意味も込め」(同)、利用者はレストランエリア前でいったん降車し、店舗を抜けたところで再び別のロボットに乗車する。こうした対策に利用者からのクレームはなく、スムーズな運用につながっている。

導入効果は数字としても表れている。これまでターミナル移動用の乗用カートには専門の職員を配置し、必要に応じて高齢者などを搭乗口まで案内していた。ロボットの導入によってこうした業務が不要となり、人件費の削減にもつながっている。コロナ禍で対面の接客が難しくなる中、人との接触を避けられるロボットは感染対策上の利点もあるという。

今後、国際線の改装に向けても自動運転ロボットの導入を検討する。手荷物が国内線搭乗客より多い上、利用者の属性も多岐にわたり「どんな使われ方をするのか分からない」ため、配置は慎重に見極める。利用者や航空会社の要望によっては国内線での増車も検討しており、関西への玄関口として魅力を高めたい考えだ。

日刊工業新聞 2023年2月14日

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