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苦しくても値上げ…コマツが持つ業界リーダーの自覚

建設機械大手であるコマツは、業績で世界景気変動の影響を強く受けつつも、基本的に成長カーブを歩んできた。ただ、歩みの方向性は年代によって大きく異なる。1970年代を輸出の拡大とすれば80―90年代は海外生産拡大と多角化、00年以降は選択と集中、グローバル連結経営に軸足を移す。堀越健取締役兼常務執行役員最高財務責任者は「01年度に営業赤字に初めて転落したことが大きな転機になった。多額の設備投資負担が必要なエレクトロニクス事業や農林機器事業を順次売却し、祖業である建設機械事業や鉱山機械事業の強化に力を注いだ」と回想する。

コマツの年間業績

22年度から始まった中期経営計画では売上高成長率の「成長性」と、営業利益率の「収益性」の二つに重点を置く。効率性指標では株主資本利益率(ROE)などもあるが、堀越取締役は「ROEは前提条件の変化により、いろいろと言い訳が出来る。売上高成長率は業界全体の中でトップレベルの成長を達成しているのかを図る指標であり、経営陣にとってプレッシャーが高い」と強調する。

営業利益率もこの発言内容と重なる。80年代、国内市場でシェアを重視して値下げ競争に走り、結果として自分たちの市場を壊してしまった過去の歴史を反省する。業界リーダーとして、他社がどうであれ、苦しくても値上げを行う。営業利益率改善の努力を怠れば、電機業界のようにコモディティ化してしまうと危機感を示す。実際、22年に続き2月からも再度の値上げを行う計画だ。

景気変動の中で売上高と営業利益率アップを続けるには同業他社にないダントツ製品や、独自技術が不可欠だ。堀越取締役は成長性のキーワードでDX化、プラットフォームとアプリケーションを活用した工程全体への収益範囲拡大、坑内堀りハードロック向け鉱山機械、ギガフォトン、林業機械事業を掲げる。自社の育成を基本にしつつ、足りない部分はM&Aも積極活用する考えで「良い案件があれば買いたい」(同)と意欲を見せる。


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日刊工業新聞 2023年02月02日

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