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富士通が考える「人とAI」が共存する未来

第3次ブームまでを分かりやすく解説。そしてこれから

人工知能は人間の脅威となるのか?


 このように、常に進化し続けている人工知能だが、ポジティブに受け入れられるとは限らない。「人間の仕事を奪うのではないか」「SF映画のように、いつかは人間にとって脅威の存在になるのではないか」と否定的な意見も聞こえてくる。

 そのような中で富士通は、「人と共存し、人に寄り添う人工知能」を目指して、30年以上にわたり研究開発を進めている。人工知能の研究において富士通が大切にしているのが、「あくまでも人工知能は、人間だけでは出来ないことや、苦手なことをサポートしていくためにある」という考え方。

 一見賢そうな人工知能だが、実は人間なら簡単にできるような処理が苦手だったり、常識が通用しないことも多々ある。一方で私たち人間は、人工知能ほど速く膨大なデータを処理することはできない。

裁量の範囲を人間が適切に決めることで共存が可能に


 このように、得意とするエリアが異なるからこそ、「ここまでは人工知能の判断に任せる」「最終的な判断は人間に仰ぐ」などと、裁量の範囲を人間が適切に決めることで、人間と人工知能は共存していけると考える。

 もうひとつ富士通が大切にしているのは、「継続して成長できる人工知能」。人間であれば失敗から学習したり、経験を積み重ねることで成長していく。ところが現在の人工知能は、残念ながらそれがまだまだ十分ではない。

 人工知能がある知能を獲得したとする。その後、新たに膨大なデータを投入し、さらなる知能を得た時、以前獲得したはずの知能が蓄積されず、失われてしまう可能性があるのだ。

「社会受容性」の研究が重要に


 人工知能が継続して成長するためには、これまでの学習を活かしつつ、新たな能力を獲得することが必要になる。また、富士通は人工知能の研究とあわせて、人工知能が社会に受け入れられるための「社会受容性」の研究も進めている。

 その一例が、九州大学 富士通ソーシャル数理共同研究部門での取り組み。ここでは経済学、心理学、数学などを融合した学際的研究を進めており、人工知能やICTが社会に入っていく中で、倫理や心理にどのような影響を及ぼすかを研究し、私たちの生活や社会に寄り添った最適な形で人工知能を活用できるような社会的な制度や施策を設計している。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、人間と人工知能の共存論が盛んに行われている。今回の話は富士通ジャーナルにおける富士通のビジネス的な視点で書かれている。 人工知能が生活に入ってくると、既存の法制度で今まで定性的に人間が納得していたものに、定量的にパラメーター設定されていくことになるはず。パラメーターは誰が決めるのか?法律の条文に「見える化」されたパラメーターがどんどん入るのか?その時に、人間の根本的な倫理に立ち返える作業が必要になるだろう。

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