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富士通が考える「人とAI」が共存する未来

第3次ブームまでを分かりやすく解説。そしてこれから
 自動車の自動走行や、話しかけた内容を理解し操作を実行してくれるスマート端末、チェスや将棋でプロとの対戦に勝利するコンピュータなど、今、人工知能(Artificial Intelligence 以下AI)が少しずつ私たちの生活に身近になってきている。人工知能については様々な定義がありますが、富士通では「人間が知能を駆使して行っていることを、コンピュータで実現する」テクノロジーと考えている。

 例えば人間は、これまで学んだことや経験を通して得た知識・知恵を使い、物事を判断したり問題を解決したりと、状況に応じて臨機応変に対応できる。ところが通常のコンピュータは、決められたプログラム通りの実行は得意だが、その範囲を超えた処理は行うことができない。

 しかし、最近では人工知能によりコンピュータがプログラムの粋を超え、人のように学習し、判断することができるようになってきた。

「1次」言葉が生まれる、「2次」人間がコンピュータに知識教える


 ここで、人工知能の歴史を振り返ってみよう。人工知能の歴史は意外に古く、最初のブームを迎えたのは1950年代後半から70年代前半に掛けてのこと。初めて「人工知能」という言葉が作られたのもこの時期。

 その後、いったんブームは去るが、1980年代以降、第2次ブームが到来した。この時代の人工知能は、まだコンピュータが学習し、判断するというレベルのものではなく、あくまで「人間が知識をコンピュータに教える」タイプのものが主流。

 1990年代なると、チェスのチャンピオンをコンピュータが打ち負かすという出来事が大きな話題をさらったものの、当時は人間の知識をコンピュータに教え込ませ、管理すること自体が難しく、再び冬の時代を迎えた。

そして人間の脳の仕組みをモデル化したニューラルネットワーク


 ところが2010年代に入り、「ディープラーニング(機械学習)」という新しい技術が脚光を浴び、人工知能は第3次ブームが巻き起こる。ディープラーニングとは、人間の脳の仕組みをモデル化したニューラルネットワークの最新技術。

 人間の脳は、ニューロン(神経細胞)と、ニューロン間を結んで情報を伝えるシナプスから構成されるが、ニューラルネットワークはそのニューロンとシナプスをモデル化して作られたもの。

 このモデルは第2次ブームの頃にも盛んに研究されたが、当時の富士通研究所が開発した移動ロボットのニューラルネットワークはわずか3層でニューロン数は29、シナプス数は232ほど。それが、技術の進展により巨大なネットワークへと移り変わり、コンピュータがより深く学習できるようになった。

 2015年に富士通研究所が開発した物体認識のネットワークは7層にまで拡大し、ニューロン数110万、シナプス数7億3000万にも及ぶ。

「人間の条件」「猿の条件」「犬の条件」が簡単に


 もう少し具体的に見てみよう。例えば、顔を見て、それが「人間の顔」なのか、「猿の顔」「犬の顔」なのかを判断するシステムを作るとする。これまでは、エンジニアが「人の顔の条件はこういうもの」というプログラムを作る必要があった。つまり、人間がコンピュータを教育していたのだ。

 しかし、これでは「人間の条件」「猿の条件」「犬の条件」として考えられることを全てコンピュータに教え込む必要があり、プログラムを作成するだけでも膨大な時間がかかってしまう。

 ディープラーニングでは、大量の画像データをコンピュータに読み込ませるだけで、そこから「人間の条件」「猿の条件」「犬の条件」という法則を、コンピュータ自身が獲得することができるようになった。

 この背景には、インターネットやビッグデータが普及したことで、膨大な情報が入手しやすくなったこと、計算機の処理能力の向上、そして機械学習アルゴリズムの進化がある。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、人間と人工知能の共存論が盛んに行われている。今回の話は富士通ジャーナルにおける富士通のビジネス的な視点で書かれている。 人工知能が生活に入ってくると、既存の法制度で今まで定性的に人間が納得していたものに、定量的にパラメーター設定されていくことになるはず。パラメーターは誰が決めるのか?法律の条文に「見える化」されたパラメーターがどんどん入るのか?その時に、人間の根本的な倫理に立ち返える作業が必要になるだろう。

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