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独自の半凝固法に欠かせない、川金ダイカスト工業のロボット活用法

独自の半凝固法に欠かせない、川金ダイカスト工業のロボット活用法

写真はイメージ

川金ダイカスト工業(福島県白河市、三輪政彦社長)は、アルミニウムダイカスト部品の鋳造から機械加工・表面処理・検査・小組み立てまで一貫で手がけている。ここで活躍するのが製品取り出しなどに使われるロボット。本社工場には15台のダイカストマシンに計27台のロボットが導入され、4輪車、2輪車、小型船舶の船外機、産業機械向けの鋳造部品の効率生産を支えている。(藤元正)

本社工場の中でも威容を誇るのが型締め力1650トンのダイカストマシンだ。かつては重量が12キログラムもある建機部品などを作っていたが、現在は5・9キログラムの自動車用オイルパン(エンジンオイルを溜めるための部材)の量産専用機として稼働する。

ここでのロボットは鋳造品を取り出す製品搬送用、離型剤塗布用、自動バリ取り機用(2台)の計4台。次に大きい同1250トンのマシンは全部で3台あり、いずれも製品搬送、離型剤塗布のロボットを2台ずつ備える。

さらに7日には同800トンの設備を1台導入。船外機の新規受注に伴う需要増に対応するためで、ロボットは3台とほかの800トン機より多い。製品取り出し、金型を冷やすスプレー装置用のほか、鋳造品の不要な部分を除去する切断機への中間搬送を3台目のロボットに担わせ、70―75秒かかっていたサイクルタイムを65秒程度まで短縮するのが目標だ。

川金ダイカスト工業が展開する半凝固ダイカスト法の「ナノキャスト法」の工程でもロボットは欠かせない。この手法では特定のアルミ合金を手元炉で溶解後、電磁撹拌で半凝固のスラリーを生成。ステンレス製のカップに入れて半凝固のまま金型に射出・充填し、鋳造後に熱処理にかける。

ナノキャスト用には型締め力500トンと250トンのマシンを1台ずつ持ち、それぞれに3台と4台のロボットを設置。製品搬送、離型剤塗布に加え、スラリーを入れるカップの供給・エアブロー洗浄を自動で行う。その結果、組織が均一で緻密、内部欠陥が少なく、機械的性質や耐圧性が向上し、歩留まりが良く低コスト―といった利点を持つダイカスト部品の量産を可能にしている。

ただ、ナノキャスト法での製品は産業用部品や2輪車の足回り部品、4輪バギーのブラケット部品などにとどまり、乗用車での採用事例はまだない。薄物が苦手で製品重量も1キログラム程度までに限られ、既存の量産車では「材料置換」となるためだ。そのため車向けについては「次世代車への提案を大手サプライヤーと進めている」(三輪社長)という。

工場内のロボットはフル稼働の状況だが、三輪社長は鋳造工程以外でロボットに期待するところも大きい。「金型メンテナンスの20代女性はすでにダイカストマシンを担当できるレベル。人手不足の中、女性や高齢者がもっと活躍できるよう、設備間の搬送など人手に頼る作業もロボットでやっていければ」と、ロボットによる人に優しい工場を思い描いている。

日刊工業新聞 2023年01月10日

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製造現場からオフィスまで、その存在感が増すロボット。多様な業界によるその活用法を追いました。

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