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主力事業が稼ぐ重工3社、今後に不安が残るワケ

重工業大手3社の業績を稼ぎ頭の事業がけん引する構図が強まっている。川崎重工業が2023年3月期連結業績予想(国際会計基準)の事業利益の約8割を2輪・4輪車などのパワースポーツ&エンジン(PS&E)部門で稼ぐように、好調な事業の比重が高まっている。今後はこれらの事業の減速懸念や、他の事業が稼ぐ力を高められるか注視する必要がある。(戸村智幸)

川重はPS&E部門の23年3月期の事業利益予想を従来予想比120億円増の680億円(前期比81・3%増)に引き上げた。2輪車が北米や東南アジアで、4輪車が北米で好調だ。物流混乱が収束し、卸売りが進んでいる。今期から国際会計基準で単純比較できないが、当期利益は過去最高更新を見込む。

重工業3社 2022年4‐12月期

ただ、2輪車などは小売り段階では「平常レベルに戻っており、コロナ禍以降の高いレベルに比べると若干減少傾向にある」(山本克也副社長)。同部門の勢いが今後落ちた時、他部門で補えるか問われる。精密機械・ロボット部門は中国市場の低迷で、事業利益予想を従来予想比60億円減の100億円(前期比28・1%減)に引き下げた。

三菱重工業は稼ぎ頭の発電機器などのエナジー部門の23年3月期(国際会計基準)の事業利益予想を従来予想比100億円減の1100億円(前期比27・6%増)に引き下げた。「石炭ガス化複合発電(IGCC)の稼働が不安定で、追加引き当てを実施した」(小沢寿人最高財務責任者〈CFO〉)。

一方で、航空・防衛・宇宙部門の事業利益予想を従来予想比100億円増の400億円(同2・0倍)に引き上げた。航空機の分担製造で貨物機やビジネス機が伸びている。

IHIは稼ぎ頭の航空機エンジンなどの航空・宇宙・防衛部門の23年3月期(国際会計基準)の営業利益予想を従来予想比30億円増の430億円(前期は93億円の赤字)に引き上げた。航空需要回復でスペアパーツ販売の復調が続く。ただ、地域路線用のリージョナルジェットのパイロット不足が問題だ。「(リージョナルジェット向けの)CF34の取扱高の力強さは戻っていない」(福本保明執行役員財務部長)。

他事業では、産業システム・汎用機械部門の営業利益予想を従来予想比90億円減の180億円(前期比40・6%増)に引き下げた。主力製品のターボチャージャー(過給器)の原材料高騰が響く。来期は価格転嫁が反映されるとみる。

日刊工業新聞 2023年02月14日

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