激震マイナス金利!地銀は難局をしのげるか
貸出競争激化、統合・再編の動きへ
加速する地元志向
日銀が導入を発表したマイナス金利政策。地銀各行の収益環境が厳しくなるとの指摘がある一方で、地域経済や国内産業への好影響を期待する声もある。
千葉興業銀行の青柳俊一頭取は「中長期的には企業の設備投資などの資金需要喚起につながり、景気が浮揚することで銀行の収益にもつながる」と見込み、「長い目で見れば、好調な企業業績は結果として個人消費の拡大につながる」と受け止める。
栃木県を地盤とする足利銀行は「マイナス金利で円安が定着すれば、製造業の比率が高い北関東経済にとってはプラスに寄与する」と見る。
一方で関西を地盤とする池田泉州銀行の藤田博久頭取は「現在の大阪は、モノづくり企業の資金需要が決して多い状況ではない。金利低下による需要喚起には期待するが、金融機関同士の貸し出し競争による”金利のたたき合い“は避けたい」と懸念する。
名古屋市や愛知県を中心とする中部地方は、金融機関数の多さなどにより他地域より競争が激化、”名古屋金利“と呼ばれるほど貸出金利が全国平均を下回る傾向にある。それでも東京や大阪の大企業向け融資よりは、まだ地元中小企業向けの方が金利が高めに設定できる余地があるとも言われる。
三重銀行は三重県や愛知県など地元で貸出金が伸びており「こちらで稼いでいく」との姿勢だ。マイナス金利で地銀の地元志向がさらに加速する可能性もある。
金融政策は限界
確実な景気回復やデフレの脱却には、日銀の金融政策だけでは限界があると示唆・指摘する意見も多く聞かれた。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」のさらなる加速を期待する声も多い。西日本シティ銀行の谷川浩道頭取は「実体経済の改善には、規制緩和や社会保障改革などの構造改革が伴わなければならない」と強調。
埼玉りそな銀行の池田一義社長も「金融政策だけでは、限界があると思う。アベノミクスの成長戦略の実行なども必要だろう」とする。
「景気回復を着実にするため、成長戦略の展開にも期待する」(常陽銀行)と、政府の総合的な経済対策の着実な実行を望む声も上がる。マイナス金利政策が、民間や政府に新たな対応を迫る。
2016年2月5日/9日/10日金融面