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技術開発を加速するスバル・ホンダ・マツダ、「安全・快適」両立へ絞る知恵

技術開発を加速するスバル・ホンダ・マツダ、「安全・快適」両立へ絞る知恵

先行車などのリスクを検知し、衝突を防ぐための技術開発を進める(ホンダ)

自動車メーカーが安全に関する技術開発を加速している。SUBARU(スバル)は2030年、ホンダは50年に自車が関与する死亡事故をゼロにするとの目標達成に向け、先進運転支援システム(ADAS)などの高度化に取り組む。マツダも、技術で対応可能な範囲において40年に同社の新車が原因の死亡事故をゼロにする方針を掲げた。安全性を最優先にしつつ、快適性を確保するにはどのような工夫が求められるか。各社は知恵を絞っている。(江上佑美子)

ホンダは22年12月、全方位安全運転支援システム「ホンダセンシング360」の搭載を中国で始めた。先進安全運転支援システムのセンシング範囲を車両前後から全方位に広げたのが特徴だ。

24年以降、運転手や周辺の状況をカメラなどで監視し、衝突回避を支援する技術を追加する。先行車や歩行者に衝突する可能性があるとシステムが判断した場合、緩やかに減速しつつハンドルを制御する。開発のポイントに置いたのが、運転手や同乗者のストレスを減らすことだ。

「運転手以外の乗員ができるだけ(システム作動による)違和感を覚えないようにした」(開発担当者)。運転手の反応が見られない場合には、次の段階として音やディスプレーで注意喚起する。

これまでホンダは車両に衝突軽減ブレーキ(CMBS)などを搭載し、事故防止につなげてきた。新技術の開発担当者は「今までのシステムが特効薬ならこれは漢方薬。むやみやたらと警告するのが良いとは限らないのではないか」と問題提起する。事故防止が目的であっても、急ブレーキやホーンで同乗者に不快感を与えるのは、可能な限り避けたいとの考えだ。

先進安全技術を手がける四竃真人エグゼクティブチーフエンジニアは「乗員が作動に気付くことなく、自然に事故を防ぐことができる“分かりにくい”システムが今後の安全技術の方向性の一つ」と説く。

ホンダは21年、50年に同社の車が関与する交通事故死者をゼロにする目標を公表した。安全安心・人研究を担当する高石秀明エグゼクティブチーフエンジニアは「数字を追うだけでなく、新しい価値として安心を追求する」と話す。そのためには一律の安全技術に加え、「必要な時だけ支援してほしい」「思い通りに運転したい」といった個々の要望に寄り添ったシステムが重要になると見る。

マツダは22年9月発売のスポーツ多目的車(SUV)「CX―60」に、運転手が居眠りなどで運転を続けられないとシステムが判断した場合、自動で減速、停止する機能を導入した。運転手の頭の向きや視線をセンサーで把握して判断する。高速道路や自動車専用道路だけでなく、一般道での異常発生にも対応しているのが特徴だ。

マツダは運転手を見守り、発作や急病、居眠りなどの異常時には安全な場所に移動するシステムを22年に導入

国土交通省は22年に道路運送車両法の保安基準を改正し、運転手が無反応状態になった場合のリスク軽減機能に関する要件を整備した。23年9月には新型車に適用予定で、マツダは要件を満たすシステムを先駆けて投入した。

運転手の体調などを見守る頼りがいのある“副操縦士”が隣にいることで、運転手は安心して運転に集中できる―。同機能の開発でマツダが目指したイメージだ。開発責任者である栃岡孝宏主査は「乗ることで元気が湧く車を作りたい。そのためにリスクをなくしていく」と狙いを説明する。

究極の解としては、全ての運転を常時システムが担う「レベル5」の自動運転技術が浸透すれば、運転手の負担は大幅に減る。ただ栃岡主査は「あくまで(運転手が車を)操る喜びを追求したい。そのために視界を工夫するなど、疲れにくい環境づくりを目指している」と話す。

安全に関する意識の高まりに加えADASなどの進化も後押しし、交通事故や死亡事故の件数は減少傾向にある。スバルは販売台数100万台当たりの死亡重傷事故数が、09年の215件から19年には105件になったと試算する。

一方で交通事故総合分析センターの統計によると、発作や急病に起因する交通事故は毎年200件程度起きている。高速道路や自動車専用道路に比べ、歩行者の通行や交差点などがあり状況の変化も激しい一般道でのリスク対策は難しい。ホンダは独自の人工知能(AI)を用いて道路状況をリアルタイムで解析する方法を開発し、高速道路で導入している運転支援技術を一般道にも広げる方針だ。安全安心を追求する自動車メーカーの挑戦に終わりはない。


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日刊工業新聞 2023年01月10日

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