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【ディープテックを追え】AIで製品設計を効率化。シミュレーションの課題解決

#116 RICOS

人工知能(AI)を製造業に活用する取り組みが進んでいる。RICOS(リコス、東京都千代田区)はシミュレーションを使った設計プロセスにAIを活用する。シミュレーションを高速化しながら、高精度に予想することで製品設計の効率化を目指す。

シミュレーションを高速化

リコスがAIを活用するのは、コンピューター利用解析(CAE)の領域だ。製品設計プロセスでは、疑似的な製品モデルに流体の動きや熱伝導などの物理現象をシミュレーションする。一方でシミュレーションの精度を高めようとすると、計算時間が長くかかっていた。

同社はAIを使い、計算時間を短くしながら高精度にシミュレーション結果を予測する。シミュレーションの高速化によりコスト削減を実現する。

回転などにも対応する

特徴はAIに入力するデータを回転や平行移動した場合にも整合性が取れる点だ。AIとシミュレーションを組み合わせる手法では、データの形状を画像や点の集まり、グラフで表現するなどがある。しかし形状を回転などすると別のデータとして扱われたり、シミュレーションと比較して結果の出力が遅くなってしまうデメリットがあるため、物理現象にはAIが使いづらかった。同社では入力したデータを回転した際、出力結果も回転させる。そうすることで物理現象のシミュレーションにAIを適応しながら、計算時間を早めた。加えて、これまでの解析データを学習データに活用。簡素なメッシュで解析が行えるようにし、扱いやすくした。

シミュレーションのイメージ
井原代表

現在は流体解析の領域でソフトウエアをSaaS(サービスとしてのソフトウエア)形式で提供する。自動車の分野では空気抵抗予測で使う。結果の出力に数日かかるシミュレーションを20分程度まで短縮できた事例もあるという。今後は独自のアルゴリズムをベースにさまざまな物理現象に対応できるようにする。2023年中にも熱流体を対象にした製品を販売する計画。将来はブラウザ上で機械学習やCAEを行えるプラットフォームへ展開する。井原遊代表は「大企業向けに製品を提供する」と展望する。シミュレーションにかかっていたリソースを削減できることにより、製品開発のリードタイムを短縮できる点を訴求する。21年には東京大学エッジキャピタルパートナーズ(東京都文京区)とDGベンチャーズ(同渋谷区)から約3億円の資金調達を実施。23年にも資金調達を行う予定で、事業拡大を目指す。

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