ニュースイッチ

電子部品・カメラメーカーがDX支援、生かす強みと凝らす工夫

電子部品・カメラメーカーがDX支援、生かす強みと凝らす工夫

マクセルフロンティアのアプリは果菜の大きさ、色合い、傷の有無の検査などに活用できる

光学技術で検査工程効率化

電子部品やカメラなどのメーカーや商社が、製造業のデジタル変革(DX)を支援するソリューションの展開に力を注いでいる。工場の検査工程では良品・不良品の判別のほか、対象物の大きさの計測、個数の計算など求められる内容は幅広く、担当者の負担軽減は喫緊の課題だ。各社は一段の効率化を求める需要に応えるため、光学技術や品ぞろえといった自社の強みを生かすとともに、顧客が導入しやすいようにアプリケーションを用意するなどの工夫を凝らしている。(阿部未沙子)

マクセル傘下のマクセルフロンティア(横浜市保土ケ谷区)は、工場の検査工程向けのカメラなどで構成される画像認識ソリューション「イグザムビジョンシリーズ」を展開する。検査対象物の有無や大きさなどを判別できるアプリを備える。営業統括本部新事業開拓営業部の武田勇人主任は「(顧客側のアプリなどの)開発費用が大幅に削減できるのではないか」と話す。

カメラには人工知能(AI)機能を搭載。良品を数十枚撮影することで、良品・不良品を判断できる。「十数社からの評価やデモの依頼が来ている」(武田主任)。今後、カメラの小型化や軽量化、高速ラインへの対応をしていく方針。2027年には同シリーズの売り上げを5億円にする計画を掲げる。

ニコンはBツーC(対消費者)向けのカメラ製造で培った技術を活用した産業用カメラ「ルファクト」を22年に市場投入した。小型で軽量な点を訴求し、顧客の導入時のハードルを下げる。

ニコンは消費者向けカメラで培った技術を生かし、産業用カメラ「ルファクト」を開発した

ルファクトは、カメラヘッドとインターフェース変換ユニットを分離した点が特徴。ユニットで画像処理を行うことでカメラ側に熱を持たせないようにし、カメラを設置する場所の自由度を高めた。デジタルソリューションズ事業部事業戦略部第二事業推進課の江口英志課長代理は「製造業にソリューションを提案していきたい」と意気込む。

フィルムなど平らな物体の撮影に強みを持つ製品を扱い、他社と差別化を図る企業もある。レスターホールディングス(HD)のグループ会社であるレスターコミュニケーションズ(東京都品川区)は、紙幣識別用のセンサーなどを手がけるヴィーネックス(香川県観音寺市)のコンタクトイメージセンサー(CIS)型ラインカメラを販売する。

レスターコミュニケーションズは平面形状の物体の撮影に強みを持つヴィーネックスのカメラを販売する

カメラと対象物の距離を50ミリメートル確保できるほか、読み取り幅が約300ミリメートルで対象物の大きさに柔軟に対応できる。今後、読み取り幅の拡大や高速ラインへの対応を検討する。レスターコミュニケーションズのイメージセンシングソリューション営業部の上玉利道朗統括部長は「当社が扱う照明などと組み合わせて提案していきたい」と語る。

ほかでは富士フイルムが自社の光学技術を生かし、産業用のカメラレンズを複数シリーズ展開して顧客の幅広い要望に対応できる体制を整えている。

中小企業を含めた多くの製造業のDXを促すには、多様なソリューションを選択肢として提示するとともに、導入後の使い勝手の良さも重要だ。製品の提供者はサポート体制を含めた総合力が問われ続ける。


【関連記事】 ミラーレスカメラの性能を決定づける異色の半導体メーカー
日刊工業新聞 2022年12月27日

編集部のおすすめ