相次ぐ製造業の国内回帰、東京都が企業誘致促進に乗り出す
再編ニーズ掘り起こし
製造業の「国内回帰」が相次ぐことに伴い東京都は企業の都内立地促進に乗り出す。拠点再編や国内での生産増強を検討する中小企業からの相談に応じる特別窓口を12月中旬に開設したのに続き、都自らも大規模展示会に出向き“回帰ニーズ”を掘り起こす。海外工場の国内移転は多大なコストや労力を伴うことから限定的との見方も一部にあったが、国内立地を促す企業支援は全国の自治体に広がりつつあり、決断を後押しすることが期待される。(編集委員・神崎明子)
都は国内回帰を検討する企業に対し、立地情報の提供や助言をワンストップで行えるよう「企業立地相談センター」を機能強化した。同センターは、都内で事業用地などを求める企業や個人事業者の要望に基づいて、登録する不動産事業者へ民間の物件情報を一斉照会。効率的に情報提供するほか、都や都内区市町村、公的機関が保有する事業用物件の公募情報も紹介する。
また現在は海外に進出している日系企業の拠点再編や生産増強にまつわるニーズを掘り起こし、都内誘致につなげるため、国内の大規模展示会に出展する形で出張相談を実施することにした。第1弾として2023年1月下旬に東京・有明の東京ビッグサイトで開催予定の半導体や電子部品関連の展示会に参加する。
国内回帰の動きは新型コロナウイルスの感染拡大や米中貿易摩擦、ウクライナ情勢に伴い混乱したサプライチェーン(供給網)再構築の一環となる。加えて、足元では日銀の金融緩和修正で円高に傾いているものの、1年前の1ドル=113円台(21年12月平均)と比べれば、なお輸出に有利な円安基調にある。為替相場の観点からも海外生産を見直す環境が整っていると言える。
こうした状況を踏まえ、全国の自治体の間では国内回帰を促す好機と捉え、交通アクセスやインフラ充実などをアピール。地元への企業誘致に力を入れる動きが広がっている。自治体の税収増につながるほか、企業は不透明な国際情勢に左右されない安定的な生産体制を築くことで、収益基盤の強化を期待できる。