神社仏閣のクラファン活用が急増しているワケ
課題/文化財保護の財源不足
神社仏閣が文化財保護に必要な費用を十分に捻出できない懸念が高まっている。国内人口の減少などで檀家(だんか)や氏子といった、神社仏閣の財務基盤を支える層の先細りが理由に挙げられる。文化庁の「宗教統計調査」によると、仏教系や神道系、キリスト教系なども含めた国内の「全ての信者数」は2021年で約1億7956万人(重複あり)。過去10年間で1700万人以上が減少した。信者数の減少だけで資金繰りを判断できないが、運営上の課題となっている。
解決策/CFで神社仏閣の維持管理
法隆寺が今夏、境内の建物や宝物などの維持管理を目的にクラウドファンディング(CF)を実施した。44日の募集期間で7000人以上が参加。目標金額の8倍弱となる1億5700万円が集まった。
今回、同寺のCFを運営したのはREADYFOR(レディーフォー、東京都千代田区、米良はるか最高経営責任者〈CEO〉)だ。同社は国内最大級のCFサービスを手がける。
神社仏閣のCFは足元で急増している。同社によると神社仏閣関係の案件で21年の支援総額は前年比約2倍の約1億6000万円だった。要因として「新型コロナウイルス感染症の影響が大きい」と同社の広安ゆきみ文化部門長は指摘する。
檀家や氏子の減少で、以前からCFを利用した境内の維持費用などの調達はあった。そこにコロナ禍が到来。外出自粛により、檀家や氏子に頼らずに拝観料などの収入源があった大規模な神社仏閣も打撃を被った。世界遺産の法隆寺も同様に影響を受けて、維持管理費用を賄うためにCFの実施を決めた。
神社仏閣のCF案件は「個々の事情にもよるが、相談が来た後に短い場合だと1―2カ月でプロジェクトを立ち上げる」(広安部門長)という。その間にネット上の募集ページを作り込む。返礼品のコースや金額帯などを検討するほか、告知戦略も練る。
同社ではCFの訴求力を高めるために専門的な知見を持つ「キュレーター」が助言したりする。CFが成功するポイントは返礼品よりも「プロジェクトの意義をどれだけ説得的に示せるかだ」(同)。一括りに“神社仏閣の修理プロジェクト”といっても「それぞれで意義は全然違うので、打ち出す点も個々にカスタマイズする必要がある」。
文化財保護に向けた資金調達手段としてCFは、さらに拡大しそうだ。同社は「大規模なところから地域密着の小規模な神社仏閣まで目配りしながら、資金調達を支援していきたい」(同)としている。(おわり。日下宗大が担当しました)