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成蹊大が取り組み拡大、独自インターンシップの絶妙なアイデア

成蹊大が取り組み拡大、独自インターンシップの絶妙なアイデア

成蹊大は理工学部の教員紹介型をはじめ、さまざまなインターンシップを手がけている(成蹊学園本館)

成蹊大学理工学部は共同研究の相手企業で実施する独自インターンシップ(就業体験)を学部全体に拡大した。この“教員紹介型インターンシップ”は、自由応募と異なり「必ず経験できる」うえ、企業の指導も手厚い。1学科での約10年の実績を踏まえ、2022年度から全3学科に広げた。今後、企業は参加学生の情報を採用時の参考にできるようになるため、他大学の注目を集めそうだ。

成蹊大理工学部は専任教員約50人のうち、中堅・中小企業を中心に共同研究を手がけるのは約3分の1と比較的、多い。1教員が複数企業と10年にわたり関わるケースもある。信頼が厚いため「期間は1週間か2週間」など教育方針に合わせてもらいやすい。BツーBの中堅企業の魅力を体感し、就職する学生も出ている。

22年度のインターン参加は32人で、新型コロナウイルス感染症の拡大前と同等に回復した。実績のあるシステムデザイン学科20人の他、情報科学科8人、物質生命理工学科4人だ。メーカーが情報系学生を受け入れるなど多様化。就職支援につながる可能性もにらみ、企業の受け入れ数など拡大する方針だ。

同大は三菱グループで実施するインターンシップ「MBT」を全学の看板として持つが、選抜が厳しい。自由応募も競争率が高く、同学部生の22年度実施は8人だった。

一方、同学部は現在の3学科から1学科5専攻への移行期にある。大括り(おおくくり)化し、専門を越えて総合的な課題解決に取り組む学びを、22年度新入生から始めた。独自インターンはこの新教育プログラムの目玉に位置付けていく。

日刊工業新聞 2022年12月15日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
就活では、知名度の高い大企業にばかり目が行く学生と、技術やビジネスの実力はあるのに採用につながらない中堅企業との間でのギャップが、あいかわらず大きい。とはいえ近年は、採用と直結ではないインターンシップでも選抜のハードルが高くなっていることに驚く。そもそもインターンシップは、”キャリア人生の体験の機会”。学生のキャリアに向けた学びを後押しする教育効果が、本来のものだ。この教員紹介型インターンに学生が参加し、そこで自分とその組織との相性に開眼する…となれば、まさに企業と大学と学生と、WinーWinーWinの理想的な形となるだろう。

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