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台風の目の立体構造、北大・東北大が観測に成功した意義

超小型衛星から連射撮影
台風の目の立体構造、北大・東北大が観測に成功した意義

魚眼カメラが捉えた台風11号(東北大など提供)

北海道大学と東北大学の研究グループは、8月下旬から日本を横断した台風11号の目の立体構造の観測に成功した。フィリピン政府と共同開発した超小型衛星を利用。衛星に積んだカメラからさまざまな角度で連射撮影し、台風の3次元構造を観測できた。各国が持つ数十機の高機能衛星と連携することで、台風を含む気象現象やその結果起こる災害への高精度で高頻度の観測が期待される。

発達した台風11号の中心部を撮影するため、衛星が台風に最接近する時の台風の位置と進路予測を推定して搭載カメラの視野を台風の中心部に向ける運用を実施。魚眼カメラと地上解像度55メートルのカメラを利用した。8月30日14時42分51秒からの2分間で台風を中心に捉えたまま露光を繰り返しながら連写したところ、その中で台風の目の中に筒状に切り立った「壁雲」を確認できた。さまざまな角度からの撮影で台風の目の雲の3次元観測に成功した。 

2018年10月に打ち上げたフィリピンの超小型衛星「DIWATA―2」を利用した。同衛星は重さ50キログラムで、地球からの高度600キロメートルを周回している。開発と打ち上げを合わせた費用は従来衛星の約100分の1となる5億円程度。

台風の中心気圧や最大風速を観測から推定するには、静止気象衛星の画像を過去のパターンと比較し推定する手法が用いられるが、誤差が大きいことが課題。台風の目の雲の形状を高精度で観測できれば台風の推移を精度良く予想できる可能性がある。だが静止気象衛星では決まった角度からの撮像に限られるため立体的な観測ができなかった。

日刊工業新聞2022年9月19日

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