エンジン不正の日野自動車、浮き彫りにされた経営体質と抱える重要問題
日野自動車による一連のエンジン不正問題は、不健全な組織風土や企業統治、ステークホルダー(利害関係者)軽視といった経営体質を浮き彫りにした。弁護士らで構成する外部の特別調査委員会から指摘された「上意下達、縦割りで風通しの悪い組織風土」の改革は道半ばだが、既に生産・出荷の正常化に向けて動き始めた。
日野自は3月、型式指定を取得するためのエンジン性能試験で過去に不正があったことが発覚。エンジンと車両の型式指定を取り消す処分を受けた。8月には特別調査委員会の調査で少なくとも2003年から不正を行っていたことが判明。経営陣からの強い圧力で追い詰められた現場の開発者が認証制度や品質よりも開発日程、数値目標を優先し、不正が広がっていった実態が明るみに出た。
10月には国土交通省から求められていた再発防止策を公表し、経営陣の処分を発表。日野自の小木曽聡社長は「陣頭で指揮を執る」として留任した。再発防止策には型式指定の申請体制や不正を起こさないための組織風土改革などを盛り込んだ。
国交省は11月、再発防止策の進捗(しんちょく)状況を評価し、車両の型式指定が取り消されているトラックの型式再申請を受理。「(審査が順調なら)23年1月中にも結果を出す」(国交省)考え。
今後、日野自は22年3月期に販売した国内向けバス、トラックの20%超に当たる車両で取り消されている「エンジンの型式指定」も再申請する方針。再申請には排出ガスが規制値に適合するように改良し、大型で9カ月、中型で7カ月程度をかけて劣化耐久試験を行い、基準を満たしていることを確認する必要がある。日野自によると現在「改良を進めている段階」だという。
売り上げの6―7割を稼ぐ海外市場ではエンジンの排ガス試験対応をめぐる米司法省の調査や企業による訴訟といった問題を抱える。今後、調査や訴訟が他の市場に飛び火する可能性があり「かなりシビアな状況」(東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは)に陥っている。