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エンジン不正20年、信頼失墜の日野自動車に待ち受ける苦難の道

エンジン不正20年、信頼失墜の日野自動車に待ち受ける苦難の道

続投を決めた小木曽社長。生産停止が長引けば長期にわたる補償がのしかかる

日野自動車が経営の正常化に向けて歩み始める。日野自は7日、エンジン試験のデータ不正問題をめぐって、国土交通省に再発防止策を提出し、経営陣の処分を発表した。歴代社長ら11人にも報酬の自主返納を求める。日野自はエンジンの性能試験において、少なくとも約20年という長期にわたり不正な方法での試験やデータ偽装を行って型式指定を取得してきた。組織風土改革や失墜した信頼回復は一朝一夕に進むものではなく、長い道のりとなる。

「長年の不正の慣行と決別し、しっかり改革を進めてほしい」。日野自の小木曽聡社長から再発防止策を受け取った斉藤鉄夫国交相はこう話した。再発防止策には型式指定の申請体制や不正を起こさないための組織風土改革などが盛り込まれており、日野自は今後、四半期ごとに国交省に再発防止策の進捗(しんちょく)状況を報告し、その内容を公表する。

また、7日付で取締役ら4人が責任を取って辞任した。一方で小木曽社長は「再発防止に向けて陣頭で指揮を執る」として留任。不正があったとされる期間は社長就任前だった点も考慮され、月額報酬を半年50%減額する処分にとどまった。専務役員ら6人も月額報酬を3カ月減額する。

長年にわたって子会社である日野自に役員を送り続けてきたトヨタ自動車は、再発防止策について「真摯(しんし)に検討した結果であると受け止めている。すぐに結果が出るものではなく、時間をかけて粘り強く取り組んでいく必要がある」とコメントを出した。「取り組みが実行力を伴うものになるよう、今後も協力を継続する」方針を示す。

今後の焦点は型式指定の再申請の時期。日野自は国内販売台数の約4割に当たる車種の型式指定が取り消されている。再申請について小木曽社長は「国交省が決めることなので申し上げる立場にない」とし「再発防止策を実行し、認証がもらえるように努める」という説明にとどめた。

他の国内トラックメーカーも半導体不足などから減産する中、日野自の生産・出荷停止が長期化するとユーザーやサプライヤーなどへの悪影響が一層拡大することが懸念されるだけに、国交省幹部は「再発防止策の内容が十分だと判断できたタイミングで再申請を受け付ける」考えだ。

帝国データバンクによると、日野自が生産を停止することによる影響額は国内約5000社で年間約1兆円に上り、「既に人員配置や原材料の調達面で甚大な影響が及んでいる」という。日野自には長期にわたる補償が求められそうだ。

日刊工業新聞2022年10月10日

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