ニュースイッチ

精度92%、九大などが胸部X線動態撮影で肺塞栓症を診断するシステム開発

九州大学の石神康生教授らは、心臓と肺の機能障害をもたらす疾患「肺塞栓(そくせん)症」を胸部X線動態撮影から診断するシステムを開発した。肺内のX線透過性の経時変化から肺塞栓症となり得る血流分布異常を評価する。同画像や胸部のX線写真の肺の異常所見を合わせて判断することで診断できる仕組みで、精度は92%となった。肺塞栓症を含む肺高血圧症の早期診断などに応用できると期待される。多施設共同・医師主導治験を予定している。

コニカミノルタとの共同研究。成果は、国際科学誌ラジオロジーに掲載された。胸部X線動態撮影は7―10秒の息止めの間に連続撮影する手法。造影剤や放射性核種を使わず、被曝量も基準値以下で検査できる。開発したシステムは同手法を応用して作られ、既存の肺高血圧症50例のデータを使って検証すると精度が92%で診断できた。肺機能の詳細を調べる従来法の結果と比べても、ほぼ一致することが分かった。

肺塞栓症を原因の一つとする「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」は国指定の難病の一つで、国内患者は約4600人で増加傾向にある。早期発見が予後にも良好な影響を与えるが原因不明の肺高血圧症を生じて見つかる場合もあり、診断が難しいという課題があった。 

日刊工業新聞 2022年11月15日

編集部のおすすめ