原子力製品でも…日本製鋼所子会社の素形材事業で不正が発生した原因
日本製鋼所は14日、子会社の日本製鋼所M&E(北海道室蘭市)の製品の品質検査不正について、外部弁護士による特別調査委員会から調査報告書を受領したと発表した。不正は5月公表の火力発電用部材だけでなく、原子力発電用を含む素形材事業全体に及び、1998年以降で合計449件に上った。原因として、M&E社の製品部と呼ぶ技術者の組織を中心にした管理体制の機能不全などを挙げた。
5月公表の火力発電用タービンの軸材のローターシャフトなど電力製品を中心に、原子力や鋳鋼、鋼材鋼管、特機などの製品で不正が確認された。電力製品が最多で341件。不正による品質・性能への影響は確認されていない。
原子力は3製品で20件。うち21年の1件が国内向けで、発電所には納入されていない。放射性廃棄物を貯蔵するキャスク用のディスク材で、製品を識別する材料番号の改ざんがあった。松尾敏夫日本製鋼所社長は「原子力製品で不適切行為が確認されたことは衝撃で、ざんきの念に堪えない」とコメントを発表した。
不正は日本製鋼所M&Eのみで、日本製鋼所の他の工場では確認されなかった。M&Eでは製造部がすべての工程に関与し、他部門に指示するなど権限が強い。報告書では、製造部が納期やコストの責任を負うため、不正を主導する動機を抱きやすいと指摘した。
報告書は再発防止策として、日本製鋼所を含む第三者の監視・監督やコンプライアンス(法令順守)意識の涵養などを指摘した。
日本製鋼所も報告書に近い内容で、自社による原因分析や再発防止策を公表したほか、関係者の処分を今後決めるとした。
日刊工業新聞 2022年11月15日