「未来のクルマ」提案する旭化成、独自材料で欧州市場に割って入れるか
日本企業にとって、多くの企業がひしめく世界最大のプラスチック・ゴム展示会「K2022」の中でいかに目立つかが重要だ。
旭化成は新型コンセプトカー「アクシー2」を欧州に初めて持ち込んだ。同車は15の自社製品を搭載。材料提案から一歩踏み込み、停車中に外の景色と一体となれるなどの旭化成の考える未来のクルマの楽しみ方まで提案する。「K」に来場した自動車業界のデザイナーとの会話のきっかけにし、共創につなげる。
旭化成ヨーロッパの西沢明社長は「自動車産業の変化に対し、完成車メーカー自身も危機感が大きい」とにらむ。二酸化炭素(CO2)排出量削減などの環境対応や、電動車や自動運転などの新技術対応次第で勝ち組が変わる。このため欧州の自動車業界は新技術に貪欲で、旭化成のチャンスになり得る。
ブースは自動車と環境に焦点を当て、特に個性的な樹脂の展示が目立った。エンジニアリングプラスチックの発泡体材料「サンフォース」は、欧州市場にない素材。「K」では、円筒型の電池を挿入するシリンダーケースへの利用を提案した。軽く、難燃性と成形安定性を備えることが利点。外殻も同じエンプラにすれば、リサイクルしやすくなる。
同じくセルロースナノファイバー(CNF)を配合した強化エンプラも、欧州市場にない。コットンリンター(綿花種子のうぶ毛)から生産した同社独自の耐熱性の高いCNFが特徴だ。
偏光を乱す「複屈折」をゼロに近づけた透明な低複屈折樹脂「AZP」は、欧州車の車載ディスプレー表面に使うと新たな価値を発揮する。というのも、海外のドライバーはまぶしさを抑えるため偏光サングラスを装着することが多い。これをかけたまま、一般的なプラ製カバーのディスプレーを見ると画像が歪んで見えにくいが、AZPなら歪まずきれいに見える。
独自の材料で、欧州車と欧州化学大手の間に割って入る考えだ。
アクシー2は「K」閉幕後、ドイツ・デュッセルドルフ市の旭化成ヨーロッパ内に展示する。同社は21年に移転して拡張し、顧客とのコミュニケーション強化を図っている。「K」の熱気を自社拠点へ持ち込み、ビジネス拡大へつなげる。
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