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充電中の全固体電池、リチウムイオンの動き捕捉に理研などが成功した意義

理化学研究所の小林峰特別嘱託研究員(研究当時)と日本原子力研究開発機構などの国際共同研究グループは、充電中の全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功した。動きの解析から、固体電解質中のリチウムイオンの移動メカニズムおよび移動領域を解明した。熱中性子ビームを入射し、それにより起こる核反応を利用してリチウムイオンの深さ分布を得る。従来手法を最適化し、時間分解能1分、厚み30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の試料まで分析可能にした。充放電時間の短縮など、全固体電池の開発加速につながる。

正極にリチウム―6濃度を95・4%に濃縮したコバルト酸リチウム、固体電解質にリン酸リチウム、負極にはタンタルを用い、薄膜全固体電池を作製。

これに軽元素分析法の一種である中性子深さプロファイリング手法を応用し、入射エネルギー0・025電子ボルトの熱中性子を入射して、熱中性子誘起核反応により放出されるα粒子と三重水素粒子のエネルギースペクトルを測定した。

このスペクトルはリチウムイオンの表面からの深さ分布に対応しており、これによりイオンの動きを捉えた。

この動きを解析した結果、この固体電解質中でリチウムイオンは「空孔移動機構」と呼ばれる動き方をすることが分かった。リチウムイオンが空孔を埋めるように移動し、この空孔が順に移動して固体電解質内でリチウムイオンが移動する。

また、リチウムイオンは固体電解質の全領域を一様には移動せず、約16・2%の限られた領域だけを移動していた。


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日刊工業新聞 2022年11月01日

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