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スイス企業が仕掛ける「無水小便器」、維持費7割削減できる秘密

スイス企業が仕掛ける「無水小便器」、維持費7割削減できる秘密

無水小便器「URIMAT」は、イケア・ジャパンが運営する8店舗に導入・設置された

スイスのウリマットは日本市場に向け、無水小便器を相次ぎ提案する。このほど、陶器製の床置き式を市場投入。受け部を下げた低リップ型の開発も進めており、従来のポリカーボネート製・壁掛け式とともに販促する。持続可能な開発目標(SDGs)の浸透を踏まえ、水や化学薬品が不要な点を訴求。災害時の有用性も強調する。2025年までに、国内で累計6000台を販売する計画だ。

ウリマットの無水小便器は、本体と交換式カートリッジで構成する。尿が流れ込むとカートリッジのふたが密閉され、においが漏れるのを防ぐ仕組みだ。天然の微生物を通して尿石が発生しにくいようにし、排水管の詰まりを防ぐ。清掃時も水は使わず、微生物の働きを利用してにおいの元を分解する。一般の小便器に比べ、水道代などを含む維持費を約7割削減できるという。

日本市場では、日本法人のウリマット・ジャパン(東京都港区、白土惠一社長)が営業と保守点検を担う。ウリマットの無水小便器は47カ国で50万台の販売実績があるが、認知度が低い日本での累計販売は約1000台にとどまる。だが、近年は環境意識の高まりを受け企業や自治体からの引き合いが活発化し、設置台数も増加傾向にあるため、もう一段の拡販に乗り出す。

日本独自の仕様として開発した陶器製の床置き式。バリアフリーに対応する

まずは、老朽化したトイレの改修需要に対応。使うたびに大量の水を流す従来の小便器を置き換え、コストを低減する。床置き式であれば、配管を利用できる強みも押し出す。新築のオフィスビルやホテル、商業施設などにも提案し、電気や水を使わない災害時対応トイレのニーズに応える。さらに国内で主流の低リップ型を早期に完成させ、国内販売に弾みを付ける。

併せて、導入後の日常的な清掃や保守点検を担当する管理会社との連携も徹底する。例えば清掃時に水を使うと微生物による効果がなくなるため、カートリッジの交換を含めた正しい清掃・管理方法を共有する。窓口となるサービス店も増やす計画で、ウリマット・ジャパン本体とともにきめ細かく対応する体制を整える。管理会社と保守点検の年間契約を結ぶ検討もする。

日本国内ではイケア・ジャパンが運営する「イケア立川」(東京都立川市)など8店舗のほか、災害時の就業者対策と帰宅困難者支援として東急不動産が開発した「渋谷ソラスタ」(同渋谷区)などが導入。寒冷地で水の利用に制限がある富士山5合目の「富士急雲上閣」(山梨県鳴沢村)にも採用されている。

日刊工業新聞 2022年10月25日

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