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進化する収穫ロボット、ビジネスモデルは成り立つか

進化する収穫ロボット、ビジネスモデルは成り立つか

ピーマン収穫ロボットの改良機。ハンドの高さを調節できるようにした

AGRIST(アグリスト、宮崎県新富町、秦裕貴社長)は、ピーマン自動収穫ロボット「L」の改良機の提供を農業法人など向けに始めるとともに、新富町内の自社農場でも使用実験を始めた。改良機はカメラを1台から2台に増やして果実の探索効率を向上。新開発の多関節アームで収穫範囲を拡大するなど作業性を向上させた。人手による収穫作業と、ロボットによる省人化。使用実験や農業法人への提供では、ビジネスモデルとしていかに成り立たせるかが焦点になる。(編集委員・嶋田歩)

収穫ロボットの初期導入費用は150万円(消費税抜き)に加えて、ロボットが収穫したピーマンの出荷額の1割。150万円にはロボットがハウス内で走行するためのワイヤ設置費用が含まれる。

改良機の収穫作業速度はアグリスト社内の実験では毎分2、3個と、旧機種の数倍に向上した。新機種は2台のカメラで畑の中でピーマンの実がどこになっているかを確認。ロボット本体が近づいて作業を始めるため無駄な動きが減り、作業速度がそれだけ早くなる。新開発の多関節ハンドはカメラの映像に合わせて実の高さまでZ軸を上下し、葉の裏側にある隠れた実も回り込む動作で収穫する。

ピーマンの実は同じS、M、Lサイズでも農業協同組合や納入先のスーパー、総菜メーカーなどによって寸法や規格に細かい差がある。その差を人工知能(AI)に覚え込ませ、「総菜メーカーのA社向けにサイズはM以上」「高級イタリアンレストラン向けに最上級等級のL以上」といったように基準に合った実だけを収穫する。

それでも相手が植物なだけに、なかなか思い通りに行かないのが収穫ロボットの難しいところだ。ピーマンの実は葉の裏側に隠れていることが多く、カメラが2台あるといっても実際には探すのが難しい。黄色や赤色のパプリカやトマトと違い、ピーマンは葉も実も緑色であるため遠くから見分けるのも至難の業だ。レストランやスーパーに出すピーマンは見栄えなどの品質基準もあるため、1個でも不良果実が入っているとNGになる。

他方で収穫作業を手伝う外国人労働者やパートタイム従業員の数も減る中、熟し過ぎた実は商品にならないため限られた日にち内に収穫しなければならず、効率向上や省人化は大きな課題だ。アグリストがロボットを顧客に納入するだけでなく、自社温室で実験を始めたのはそうした事情も背景にある。

リンゴなどの果樹と違い、ピーマンは苗を植えてほぼ1カ月で実がなり、数カ月は続けて収穫できるため、多くの作業データを入手できる。夜間作業や連続・長時間作業に対応可能な点などロボットならではの特性も生かし、ビジネスモデルを確立できるかが注目だ。


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日刊工業新聞 2022年10月20日

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