コイン型電池の代替生まれるか、有機熱電素子でリチウム電池充電に成功
産業技術総合研究所の向田雅一主任研究員と衛慶碩主任研究員は、有機熱電素子でリチウムイオン電池を充電することに成功した。100度Cの熱源を利用して70ミリボルトの電圧を発生させる。これを昇圧回路で2・4ボルトまで高めて充電に必要な電圧を確保した。有機熱電素子の性能は8割向上させた。コイン型電池の代替を目指す。
導電性のPEDOTと絶縁性のPSSを交互に積層した有機熱電素子を開発した。
積層する膜厚は20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)で50枚を積層し圧着して作製する。
この直列ユニット四つを並列につなぎ200層分で厚み6ミリメートル、重さは5グラムになる。
100度Cの熱源で40度の温度差を電流に変換すると出力は70ミリボルト、94マイクロワットになった。出力密度は1平方センチメートル当たり72マイクロワットと8割向上した。圧縮でPEDOT同士が近接して電気抵抗を抑えられた。
これを昇圧回路を介してリチウムイオン電池につなぐと36時間で充電できた。80度Cの熱源なら60時間、60度Cの熱源なら100時間で充電できる。3カ月間の連続作動試験をクリアした。蒸気配管などの排熱を利用し、無線センサーなどを稼働できる。
日刊工業新聞2022年9月30日