タイヤメーカーが主要材料「天然ゴム」確保へ絞る知恵
タイヤメーカーが、主要材料の一つである天然ゴムのサステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みを加速している。主な供給源のパラゴムノキは、熱帯でしか生産できないといったリスクがある。ブリヂストンは代替材料として乾燥地帯で育つグアユールに着目、2026年にはグアユール由来の天然ゴムの実用化を目指す。住友ゴム工業はトマト由来酵素を用いてパラゴムノキを品種改良し、天然ゴムの収率を改善する。タイヤの安定生産に向け、各社は対応を急ぐ。(江上佑美子)
天然ゴムは、一般的なタイヤの場合で原材料重量の3割を占める。「摩耗性や強度に関し、重要な役割を担う」(住友ゴムの宮城ゆき乃材料企画部課長)素材だ。原料の大半はパラゴムノキだが、栽培地の9割が集中する東南アジアでは、根が腐り木を枯死させる「根白腐(ねしろぐされ)病」の被害が深刻化している。
ブリヂストンは25年までに4000万ドル(約58億円)を投じ、米国のグアユール農園の規模を最大で現行比約90倍となる100平方キロメートルに拡大する。8月には米国のカーレースで、グアユール由来の天然ゴムをサイド部分に用いたタイヤを投入。安全性と運動性能を実証した。「今後もパートナーとの共創やエコシステム(生態系)構築で、実用化を加速する」(石橋秀一グローバル最高経営責任者〈CEO〉)。
パラゴムノキの収量増も図る。インドネシアのパラゴムノキ農園に全遺伝情報(ゲノム)解析技術を用いて成長が速い優良種を導入するほか、人工知能(AI)画像診断による病害対策や、ビッグデータ(大量データ)を用いた植林計画を進める。35年には面積当たりの収量を22年計画比2倍に増やす考えだ。
住友ゴムはトマト由来酵素を改変したバイオポリマーの合成に成功。パラゴムノキに組み込むことで1本当たりから採れる天然ゴムの量を増やせるほか、天然ゴムの耐摩耗性の向上にもつながる。上坂憲市材料企画部長は「40年までには活用したい」と話す。
ただサステナビリティーに関する取り組みは個社だけでは難しい。タイヤ、自動車メーカーは18年に国際的な枠組み「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」を設立。天然ゴム生産の85%を小規模農家が担っている状況を鑑み、経済面や技術面から支援している。