インバウンド鈍化?真価問われる時計業界―メーカー3社インタビュー
カシオ計算機専務執行役員・増田裕一氏
■金属製アナログけん引
―時計事業は順調に拡大しています。
「国内では『オシアナス』、海外では『エディフィス』といった具合に金属製アナログ時計がけん引している。オシアナスは上期に前年同期比2倍近くの実績が出た。デジタル時計を得意としてきた我々にとっては新領域。開拓の余地は豊富にある。GPS電波の取得、スマートフォンとの連携などが可能なハイテク感と、ビジネスの場面にも合う洗練された外観が特徴。双方を兼ね備えている点が、評価されている」
―主力のG―ショックはどうでしょう。
「G―ショックブランドは16年3月期の出荷総数が800万個を超える見通しだ。90年代後半のG―ショックブームを上回る水準が続いている。アジアの新興国などでファッションアイテムとして認知されつつあることが要因。こうした流れを定着させていきたい」
―先々の需要をどうみていますか。
「ここ1年余り急拡大してきたインバウンド需要は、若干動きが弱くなっている。16年は15年と比べると幾分落ち着くのではないだろうか。加えて中国経済の状況などを考えると、腕時計のグローバル市場は横ばいに近い動き方をすると思う」
―どんな成長戦略を描いていますか。
「当社にとっての高価格帯品を充実し、平均単価を上げていく。オシアナスやエディフィスのほか、G―ショックの最上位品『ミスター―G』なども拡充する。これに合わせてハブ空港などでの宣伝もさらに強化したい」
【記者の目/国内は日本人向けが主力】
各社ともインバウンド関連の比率は国内販売の15%前後。急速な需要拡大に対応してきたが、「国内は日本人向けが主力」という基本姿勢は変えていない。拡大の鈍化に対しても、トップの見方は冷静だ。今後は足元の需要が堅調な日本人向けの販売や、北米市場の開拓で各社の真価が問われる。高価格品やGPS電波対応のハイテク時計、スマートウォッチなどで、どれだけ存在感を出せるかが焦点だ。
(聞き手、文=藤崎竜介)
日刊工業新聞2016年1月25日 機械・ロボット・航空機2面