懸念されるDCの消費電力拡大、NTTデータはどう対応するか
過冷却抑制・サーバーの安全担保
NTTデータがデータセンター(DC)におけるサーバールームの室内環境を即時に可視化できるシステムを導入した。デジタル変革(DX)の機運を背景にDCの需要が高まり、消費電力の拡大が懸念される中、人工知能(AI)活用などによって室内環境に応じた効率的な冷却を可能にする。サーバーの安全性を担保しつつ、過冷却を防ぐようなDC運用を広めて環境負荷の低減につなげられるか試される。(狐塚真子)
「顧客の大事なデータを預かる上で(DCサービスの)信頼性を担保する必要があり、長らく過冷却の時代だった。省エネ対策の取り組みも求められる中、風向きが変わり始めている」―。ファシリティマネジメント事業部グリーンソリューション&PMO担当の堀口茂美部長は、可視化システム導入の背景をこう話す。
メーカーが保証するサーバーの動作環境温度は35度C程度だが、一般的なDCではシステムの安定運用を重視し、25度C程度に設定されている。施設運用の観点では、部屋や機器ごとの状態を詳細に把握することが困難であったため、過冷却の発見が遅れてエネルギーロスが生じていた。
そこでNTTデータは、空調機や室内の温度センサー、サーバーから、温湿度やサーバー1台ごとの電流値、給排気温度、電力消費量といった情報を取得し、可視化できるシステムを住友電設と共同開発。熱だまりが発生した際などに、問題箇所を早期検出できるようになった。
「サーバー室に設置できるセンサーの数には限りがある。一方、サーバー内部には約100ものセンサーが搭載されており、(センサーで得た情報を活用することで)実環境に近いモデリングが可能」(NTTデータの堀口部長)。サーバーからの情報収集には、マルチベンダー対応の米インテル製ソフトウエアを採用した。
4―5月に実施した効果検証では、NTTファシリティーズ(東京都港区)のAIを活用した空調制御システムと合わせて運用することで、冷却エネルギーの約35%削減を実現した。同システムはNTTデータの三鷹データセンターEAST(東京都三鷹市)で運用しているが、2023年6月に稼働予定の同センター2期棟などへの展開も計画する。
同社のDCにおける電力使用量は、同社全体で使う電力の約8割を占めている。下垣徹グリーンイノベーション推進室長は「高効率の機器を入れて終わりではなく、R&Dの要素も取り入れながら、さらなる取り組みを進める」と意気込む。長期にわたって実効性を示していけるか注目される。