島津製作所と新会社を立ち上げた塩野義製薬の狙い

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塩野義製薬は島津製作所との折半出資により、下水モニタリングのAdvanSentinel(アドバンセンチネル、大阪市中央区)を1月に設立した。塩野義にとって医薬品以外の新規事業を確立し、ヘルスケアをサービスとして価値提供する第一歩となる。下水中の病原体から感染症の早期検知や流行予測、変異の把握などを行う。塩野義の強みである感染症分野で多角的な事業展開を図る。

下水モニタリング事業への参入は、当時塩野義製薬の研究部門の社員だった岩本遼アドバンセンチネル研究開発部部長が2019年の社内コンペで発案したのがきっかけ。「感染症は個人で完結しないため、社会でリスクを考えることが被害抑制につながる」(岩本部長)と提案した。当初は薬剤耐性菌からのスタートを想定したが、コロナ禍を受けて新型コロナウイルス検出に舵を切った。

海外に比べ日本の感染者数が少なかったため下水からウイルスを検出するのに困難を極めたが、北海道大学との共同研究で従来の100倍の感度で検出できる技術を確立した。その結果、早期の事業化の指示が出て21年10月から急ピッチで準備を進めた。ただ、下水モニタリング事業は欧米では盛んなものの日本では社会への浸透自体が課題となる状況だった。普及をスムーズにするため、同時期に下水疫学への参入を表明した島津製作所と連携しアドバンセンチネルを設立した。

アドバンセンチネルの社員は現在12人。「それぞれの元々の事業が異なるため考えの前提に違いはあるが目的は共有できている」と今井雅之アドバンセンチネル副社長は話す。制度上の制限が多い医薬品は特に営業面で他業界との違いがあり、今井副社長は「島津のBツーBの顧客への対応は、塩野義が製薬業界から飛び出すにあたって重要な姿勢やノウハウが多い」と連携に手応えを感じている。

塩野義は感染症分野で治療や予防、診断と各段階で事業を展開。下水モニタリングでは社会での感染症の動向がわかる「検知」が加わる。医薬品やワクチンの需要を予測し、製造や供給を迅速化するという既存事業への好影響も期待できる。

日刊工業新聞2022年8月4日

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