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東レが開発、使用済み電池からリチウムを回収するスゴいナノ濾過膜

東レは、使用済みのリチウムイオン電池(LIB)からリチウムを回収するナノ濾過(NF)膜を開発した。NF膜の耐酸性を約5倍にリチウムの選択性を約1・5倍に高めたことで、廃LIBリサイクルでNF膜分離・回収が可能になる。同膜分離法を適用すれば、製造コストを5分の1に低減できるという。電気自動車(EV)の普及により2030年にはリチウムの供給不足が懸念されており、27年頃の実用化を目指す。

廃LIBリサイクルでは高温処理したブラックマス(粉末)を強酸で有価金属を回収した最後にリチウムを抽出する。これまでのNF膜は耐酸性が不足し、適用できなかった。新NF膜は酸との反応性を引き下げた上に孔径の均一性を高めたことで、同リサイクルで有価物回収後に膜分離工程を加えることを可能にした。

リチウムは塩湖から濃縮・精製する塩湖法と、採掘した鉱石を焙焼・精製する鉱石法が主流。NF膜分離が実用化すれば、製造コストを低コストの塩湖法並みに、生産性を鉱石法並みに高めることができる。さらに天然資源埋蔵量からの依存脱却や、二酸化炭素排出を鉱石法の約3分の1に削減可能のメリットがある。

現在の廃LIBリサイクルでは製造コストが高いため、リチウムの大部分が廃棄されているという。

日刊工業新聞2022年8月30日

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