【ディープテックを追え】AIで酵素開発。環境と経済、研究を技術でつなぐ

#98 digzyme

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東京工業大学発スタートアップのdigzyme(ディグザイム、東京都港区)はバイオインフォマティクスを基盤技術とする酵素開発を手がける。現在の石油由来の化学製品を、開発する酵素を使ったバイオプロセスでの生産に置き換える。

渡来直生最高経営責任者(CEO)は同社を東工大在学中に起業。その理由は、「自由に研究できる場を作りたい」という思いからだ。酵素を通じて環境と経済、そして研究をつなげるか。

AIで酵素開発

環境負荷の低減を目的に酵素を使い、製品を製造するバイオプロセスへの注目が集まっている。バイオプロセスでは、微生物などが持つ酵素を使って物質生産を行う。高温高圧を必要とする石油由来の製造プロセスに比べ、反応のエネルギー負荷を低減できる。一方で課題もある。数多くある酵素から、目的の反応物を作り出す反応経路を見つけることが困難な点だ。ディグザイムは人工知能(AI)でバイオプロセスを構築する。従来の経験や偶然に頼った合成系デザインを、低コスト・高効率化する。

技術の特徴は酵素が持つ未知の反応を探索できる点だ。酵素は本来、1種類の物質を別の物質に変える触媒機能を持っている。ただ、まれに本来の物質以外を触媒する未知の機能を持つ酵素がいる。同社は作りたい化合物に合わせて、この未知の反応を持つ酵素を含めた反応経路を、AIで解析する。加えて、酵素の活性や耐熱性を付与したり、目的の化合物の収量を増加させる酵素改変を提案するツールも開発中だ。

反応経路のイメージ

今後はプラントなどで反応を制御するための因子の取得や最適化するツールも開発する計画。将来はこれらのツールを組み合わせて、バイオプロセスによって作りたい物質を入力すると、最適な酵素の反応経路や反応条件をAIで提示するプラットフォームの確立を目指す。

プラントスケールまで大型化

すでにいくつかの化合物でパイロットプラント規模を目標に開発を進める。大麻草由来の成分、カンナビノイドの製造では使う酵素を絞り込んでおり、スケールアップを目指す。大麻草から抽出する方法よりも安価に大量生産できるようにする。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金も活用する。23年に1リットル、24年には10リットル規模のプラントまで大型化する。渡来CEOは「バイオプロセスは化合物の製造までデザインできなければ、ライセンスしづらい」と話し、「自社で実績を作り、化学メーカーへ展開する」ことを展望する。そのほかには樹脂原料や香料といった化合物で同様の研究を進める。27年までにライセンス収益化する計画で、同時期ごろの新規上場(IPO)を狙う。

渡来CEO

起業する前は研究者を目指していた渡来CEO。ただ、基礎研究ではなく「すぐ使える研究」ばかりが重要視される現状に疑問を抱いていた。渡来CEOは起業の理由をこう話す。「自由な研究が積み重なって新しい事業が生まれる。事業になる研究ではなく、研究を事業にするロールモデルを作るという信念だ」。将来は企業が開く「寄付講座」を作りたいという。「そうなれば、自分も研究の世界に戻ってもいいかな」と笑顔で話す。地球と経済、研究、それぞれが調和した未来の実現のため奮闘は続く。

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