車両輸送に充電設備…EV普及のカギ握る周辺産業の今

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EV用の輸送機材「Zモデル」

電気自動車(EV)の普及に向け、周辺産業の環境整備が着々と進んでいる。EV自体の性能向上や低価格化はもちろん、車両輸送や充電インフラ、リユース・リサイクルなど、ライフサイクルの各段階において先行して課題を把握し、EV対応を進めることが普及促進のカギとなる。完成車メーカーが電動化戦略を相次いで打ち出すなか、関連事業も本格展開を目指し技術開発やサービスの拡充を急ぐ。(増田晴香)

【ゼロ】輸送、車両重量増に対応

ゼロは特殊車メーカーの浜名ワークス(浜松市浜北区)と共同開発したEV輸送機材「Zモデル」を2021年11月に運用開始し、これまでに10台以上を導入した。電池容量が拡大するEVはガソリン車と比較し、車両重量が増加傾向にある。2・5トンを超えるEVも発売されるなど、従来の車両輸送用のキャリアカーでは輸送効率の低下が懸念される。

Zモデルは最大積載量を従来比で約3割増の11・2トンに高めた。トラクターとトレーラーの連結部を運転席側に近づけ重心を前方に移動させるなど構造を見直すことで、積載量を増やした。5―10年以内に輸送車全体の2割に当たる100台の導入を目指す。

今後はZモデルより積載量を向上した機材の開発も計画する。ただ「全固体電池の量産化など、技術の進展で重量増が大幅に抑えられる可能性もある」(ゼロ)とし、今後の動向を注視しながら需要を見極める。

重量を踏まえた新たな料金体系も検討事項の一つ。輸送料金はガソリン車の場合、車体のサイズなどを基準に料金を設定してきた。一方、EVは小型車でもガソリン車の中型車と同程度の重量になることも考えられ、従来のサイズ基準を踏襲するのは難しいという。

同社は中国で製造したEVを工場から日本まで輸送するサービスも始める。21年に子会社化した中国・陸友物流を活用し、海上輸送、陸送と両国にまたがる国内外一貫輸送体制の構築を検討する。輸送体制の整備により、国内完成車メーカーや輸入車メーカーによる日本でのEV販売拡大を下支えする。

【エネチェンジ/テラモーターズ】短期間で充電基盤拡大

EVが本格普及する上で充電設備の拡充は喫緊の課題だ。政府は充電インフラ整備の補助金を設けて設置を後押しする方針。充電サービス事業者は補助金などを活用し、無料で充電器を設置するキャンペーンなどを実施している。

エネチェンジは6月、普通充電器設置サービスに最大で300億円を投資する戦略を発表した。初期費用を同社が負担し、施設のEV充電インフラ導入のハードルを下げる。27年までに3万基の設置を目標とする。城口洋平最高経営責任者(CEO)は「パートナー企業とも協力しながら本気で3万台設置に挑む」とし、500社の販売パートナーとの協業を計画。すでに50社以上と提携した。

の宿泊施設やゴルフ場、商業施設など3時間以上の滞在を見込む場所での「目的地充電」が無償設置の対象となる。現状、目的地充電用途で設置されている普通充電器のほとんどは3キロワット出力。「EVバッテリーの大容量化に伴い、倍速の充電器の普及拡大が必要」(城口CEO)とし、6キロワットの充電が可能な充電器「モデル2」も開発した。充電の利用料金で投資回収を図るビジネスモデルで、同事業を経営の柱に育てる。

テラモーターズ(東京都港区、上田晃裕社長)は4月にEV充電インフラ事業「テラチャージ」を始めた。既設の分譲マンションに無償で充電器を設置し、初期費用やランニングコストを負担。EVの利用者から1時間当たり150―200円の充電料金を得て収益化する。マンションを対象に初年度1000基の導入を目指す。

パナソニックグループのEV用コンセントを内蔵し、独自のIoT(モノのインターネット)機器を備えた充電器を設置する。予約や充電制御、料金決済など全てを利用者のアプリケーション(応用ソフト)上で完結でき、管理の効率化につながる。同社はマンション管理会社と提携し設置の提案を加速。今後は新規導入だけでなく、既存設備からの置き換えや増設、新築時の設置など広範に事業展開する。

富士経済(東京都中央区)がまとめた国内のEV・プラグインハイブリッド車(PHV)向け充電インフラ普及動向調査によると、35年に普通充電器は21年比2・6倍の7万6770基、急速充電器は同3・0倍の2万4060基となる見込み。低コストでの設備導入や管理のしやすさを訴求する各社の戦略で、短期間での台数増やサービスの拡大が期待できる。

【オークネット/フォーアールエナジー】使用済み電池再資源化

使用済み車載電池の有効活用に向けた動きも広がる。オークネットは19年に出資したMIRAI―LABO(ミライラボ、東京都八王子市)と共同で、使用済み電池の再利用・再資源化の事業モデル確立に取り組む。2次・3次流通を実現することで電池の価値を最大化し、環境対応や自動車産業の持続的発展に貢献する。

両社はEVの中古車について、リチウムイオン電池の劣化度合いを測る技術開発や評価の基準作りを推進している。電池の状態から中古EVとしての価値を数段階で評価するほか、車載電池として利用できないものは、蓄電システムや街路灯など適切な用途で再利用する仕組みを想定する。ミライラボはEVの使用済み電池を自律型街路灯として再製品化する技術などを有する。電池の劣化が大きく再利用が難しい場合は、電池材料を回収し再資源化する考えだ。

電池の二次利用については各社が技術開発に乗り出している。日産自動車と住友商事が出資するフォーアールエナジー(横浜市西区)は岩崎電気、三ッ輪ビジネスソリューションズ(東京都新宿区)と提携し、EVの使用済み電池を使った無停電電源装置(UPS)を7月に市場投入した。

車載電池の再利用で、UPSの製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)排出量を年間最大約315トン削減できるという。原材料の調達困難や高騰などの解消にもつながる。

欧州では電池のリサイクルが義務化される方向だ。中古EVの価値向上や環境対応のため複数企業が連携し、技術・ノウハウを共有しながらリユース・リサイクル体制を構築する。

日刊工業新聞 2022年8月16日

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