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「キンカチョウ」のヒナが親の歌聞いて学習、脳神経回路のメカニズム解明

「キンカチョウ」のヒナが親の歌聞いて学習、脳神経回路のメカニズム解明

キンカチョウのヒナ(右)が親から歌を教わる(沖縄科技大提供)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の杉山陽子准教授らは、歌を学習する鳥の一種である「キンカチョウ」のヒナが親のうたう歌を学習する時の神経回路の仕組みを明らかにした。歌を学習しているヒナの脳内の神経活動を3―4日間記録。スピーカーから流れる親の歌よりも、親が直接ヒナに向けて歌をうたった時の方が強い聴覚反応を示すことが分かった。生物同士の社会的な関わりと音声学習の詳細な関連の解明につながると期待される。成果は16日、英科学誌ネイチャーの姉妹紙に掲載された。

脳内の注意や覚醒レベルをコントロールすると考えられている領域「青斑核」に注目。親の歌を聴いて学習する前にスピーカーから親の歌を聴かせ、その後に親と一緒にケージへ入れて直接歌を聴いて学習させることを繰り返した。青斑核と高次聴覚野の神経細胞で、スピーカーから流れる親の歌より親が直接ヒナに歌をうたった時の方が聴覚反応が強かった。高次聴覚野の神経細胞は歌の音の特徴に反応したが、青斑核の神経細胞は親が歌をうたうこと自体に反応したことが分かった。ヒナが親の歌を聴いている時に青斑核と高次聴覚野の神経回路の働きを抑えると、親の歌を聴いても上達しないことが明らかになった。

キンカチョウは親がうたう歌を聴いて学習する。これまではヒナはスピーカーなどから親の歌を聴いても学習せず、親子が直接関わって歌を聴くことでヒナの学習意欲が高まると考えられてきた。だがその根拠となる親子の社会的な関わりが歌の学習を制御する仕組みや、脳内の神経回路の機構などは解明されていなかった。

日刊工業新聞2022年8月17日

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