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ESG課題解決を後押しする三菱UFJモルガン、ETN残高に応じて団体に寄付

ESG課題解決を後押しする三菱UFJモルガン、ETN残高に応じて団体に寄付

脱炭素社会への移行を推進する団体などを支援する(ブルームバーグ)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、上場投資証券(ETN)の投資残高に応じて環境・社会・企業統治(ESG)の課題解決に取り組む非営利団体に寄付する取り組みを始めた。投資家平均保有残高の合計額の約0・03%を同社負担によって寄付に充てる。投資家にとって投資妙味を得ながら社会貢献できる利点がある。同社調べで、上場する金融商品で寄付へのひも付きは初めてという。(編集委員・川口哲郎)

ETNは、発行体(金融機関)の信用力をもとに、価格が株価指数などの特定の指標に連動することを保証する上場商品。上場投資信託(ETF)とは異なり、証券に対する裏付け資産を持たない。手数料分を除き、償還価額と対象指標の間のずれが発生しない特徴がある。

現在、東京証券取引所に上場するETNは27銘柄。ETN全体の6月の売買代金は1328億円と、ETF全体の約2%にとどまる。ETFよりも認知度が低く、市場規模がまだ小さいのが課題だ。同社は寄付の実施によって認知度の向上と市場の活性化につなげたい考えだ。

寄付に対応するETNは2020年11月上場の「スマートESG30女性活躍」「スマートESG30総合」と、3月上場の「スマートESG30低カーボンリスク」の3銘柄。「女性活躍」は女性活躍を推進している銘柄、「総合」はESG課題への準備が進んでいる銘柄、「低カーボン」は脱炭素への移行準備が進んでいる銘柄と、それぞれのテーマに応じて上場企業の中から30社を厳選し、指標としている。

投資残高は3銘柄合計で6月末に約90億円。過去8―9年の平均騰落率はいずれも東証株価指数(TOPIX)を上回っている。

毎年度5月に寄付を実施し、初回は23年5月を予定する。女性が活躍できる社会や脱炭素社会への移行の推進などに取り組む団体を選定し、寄付を実施する。完了後は寄付先団体や寄付金額を公表する。

同社は商品の上場にとどまらず、ESG課題解決に向けた取り組みを支援する方法として寄付を選んだ。投資家にとってESG対応に優れた企業に投資するだけでなく、寄付によって非営利団体の活動にも貢献でき、投資の意義が深まる。環境や社会への影響がますます考慮される中で、寄付の枠組みが広まる可能性もある。

日刊工業新聞2022年7月29日

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