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ドローンが飛び交う未来へ、NICTの研究開発のこれまでとこれから

世界的にも急速に拡大する飛行ロボット(ドローン)市場を見据え、国はこれまで原則認められていなかった有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行「レベル4」を2022年度内に実現する計画である。また今後は航空機や空飛ぶクルマも含めた一体的な「空モビリティ」を発展・強化するという方向性も示している。

NICTでは、10年ほど前から小型無人航空機(当時はまだドローンという呼称は一般的ではなかった)のもつポテンシャルとその無線通信の重要性に着目し、主に災害時などで地上の通信インフラが利用できなくなった場合のシナリオを前提とした研究開発を行ってきた。

まず世界の最先端の無人航空機について学ぶことを兼ねて、12年、軍用で世界的に普及していた米国のエアロバイロンメント社製の手投げ式小型電動固定翼機(翼長2・6メートル)を民生用として導入し、これに独自開発の無線中継機を載せてその特性評価を行うとともに、地上に臨時の無線LANスポットを形成する実験を開始した。

次に、15年よりドローンを目視外・見通し外でコントロール・モニターするための中継用ドローンを用いた920メガヘルツ帯(メガは100万)マルチホップ中継システム「コマンドホッパー」の研究開発に着手、その後総務省が「無人移動体画像伝送システム」としてドローンやロボット用に制度化した169メガヘルツ帯も追加実装し、現在に至るまで電波が伝わりにくく携帯電話も圏外が多い山間部を中心にその有効性を検証してきた。同年12月には国内では初めて「無人航空機」が定義された改正航空法が施行された。

またドローン同士や地上との間でそれぞれの位置情報を直接共有できる機体間通信システム「ドローンマッパー®」の開発にも着手し、これを用いて複数のドローン同士が地上を経由せずに直接連携して自律的に衝突を避け、また自動追従による編隊飛行を行うことが可能であることを21年度初めて実証した。この技術では最大10キロメートル程度までの距離で通信が可能なため、ドローンとヘリコプターの間に適用できることも示された。

今後はさらに、無線通信に関する専門知識を生かしつつ対象を新しい「空モビリティ」にも拡張し、それらの統合的な安全運用に役立つ無線通信技術の研究を進めていきたいと考えている。

◇ネットワーク研究所・ワイヤレスネットワーク研究センター・ワイヤレスシステム研究室 主任研究員 三浦龍

84年NICTの前身である旧郵政省電波研究所に入所。以来、衛星通信、成層圏中継、ドローン用無線などの研究に従事。センターの上席研究員を最後に退職し21年より現職。日本無人機運航管理コンソーシアム電波調整WG主査。

日刊工業新聞2022年6月14日

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