ニュースイッチ

経営基盤の強化待ったなしの大王製紙、グループ再編の行方

大王製紙は「エリエール」ブランドで知られる総合製紙会社。原料のパルプから紙製品、日用消費財まで一貫して手がけ、「紙・板紙事業」と衛生用紙やおむつなど「ホーム&パーソナルケア(H&PC)事業」の一体運営を特徴としている。

H&PCをグローバル展開すべく海外でM&A(買収・合併)を進めてきたが、2021―23年度の現中期経営計画は国内深耕の色が濃い。足元はコロナ禍や原燃料高、円安進行に直面し、迅速で柔軟な改革、経営基盤の強化が待ったなしだ。

「一体運営の進化によるレジリエンス(しなやかさ、回復力)の高い現場力」を実現すべく、グループの再編が進む。この4月にはダイオープリンティング、三浦印刷、千明社など傘下印刷会社5社を統合し「ダイオーミウラ」(東京都墨田区)が始動した。商業印刷、シール・ラベルなど各社の得意領域を一体化して収益を拡大しつつ、組織の見直しや固定費の削減を図る。

10月には紙・板紙販社の大王紙パルプ販売(同中央区)と、業務用家庭紙販社のエリエールビジネスサポート(同豊島区)を統合。二つの事業の垣根を取り払い、業務系の流通関連基盤を強化する。

これらは業務合理化の狙いもあるが「他事業商品の販売促進など、現場の意識改革の成功例をグループ全体に広げる取り組み」(大王製紙の品川舟平上席執行役員)といえる。生活者に近いH&PC分野に参入し40年超培ってきた「マーケット志向の営業手法が変化の必要性の認識につながっている」(品川上席執行役員)。

改革は、通信販売向けなどで堅調な段ボール原紙・製品にも及ぶ。子会社の大王パッケージ(東京都千代田区)は21年に芳川紙業(兵庫県川西市)、この5月には吉沢工業(新潟県出雲崎町)を子会社化した。営業エリアを拡充したり、段ボール工場の“空白地帯”を埋めたりしてきた。

大王製紙は事業規模やリソースは競合に及ばないとし、だからこそ一体運営の重要性を認識する。「不断の改革を推し進めてきたが変化の激しい今日、よりレジリエンスなグループ経営に深化させる必要がある」(品川上席執行役員)と危機感をバネに飛躍を図る。 

日刊工業新聞2022年6月16日

編集部のおすすめ