不採算事業は整理、三井E&SHDが進める経営再建の道筋
三井E&Sホールディングス(HD)が事業を絞り込んで経営再建を進めている。祖業の造船事業の新造船から撤退するなど不採算事業を整理した。舶用エンジンと港湾用クレーンの機械事業を軸にした新中期経営計画を2023年3月期に始動し、再成長を図る。23年4月には持ち株会社制を解消し、三井E&Sに社名変更する。
18年のインドネシアの石炭火力発電所の土木建築工事の巨額損失をきっかけに経営が悪化し、19年度に事業再生計画を始動した。
造船は厳しい事業環境が続き、21年10月に転換点を迎えた。艦艇事業を三菱重工業に売却し、商船事業は常石造船(広島県福山市)に事業会社の株式の49%を譲渡し、新造船を終えて開発・設計に特化した。5月には17%を10月に追加譲渡することも決めた。
海外の発電土木建築工事は2件が完工し、1件が一部の工事を残すのみとなった。エンジニアリング事業はこれらの手持ち工事の完工後に撤退する。
一連の事業・資産売却は20件、1200億円に及ぶ。連結従業員数は20年3月期の1万3000人から23年3月期に6000人に減る。50・1%を保有していた三井海洋開発の株式は21年11月に1%売却し、連結から外れた。同社の売上高が計上されなくなることで、23年3月期の売上高は2500億円を予想する。前期比56・8%減だ。
20年3月期の売上高7864億円と比べると、規模は大きく縮小する。新中計の最終の26年3月期も2800億円と大きくは増えない。高橋岳之社長は「規模よりもしっかり利益を上げる」と方向性を示す。営業利益率を23年3月期予想の2%から26年3月期に6%に高めるほうを重視する。
舶用エンジンと港湾用クレーンはシェアが高く、競争力のある分野だ。強みに特化して経営再建を果たす狙いだ。デジタル活用などのアフターサービス強化や脱炭素化に資する製品を伸ばせるかがカギとなる。