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循環経済80兆円市場へ、環境省がまとめた工程表案の全容

環境省は2050年までに資源を繰り返し利用する社会への移行に向けた循環経済工程表案をまとめた。30年までに企業や自治体のプラスチックの回収量を倍増し、電子機器に含まれる金属リサイクル原料の処理量も倍増させる。脱炭素政策と連動し、30年には循環経済関連ビジネスを現状比1・6倍の80兆円への成長を目指す。

循環経済工程表は環境相の諮問機関である中央環境審議会の循環型社会部会がまとめた。意見公募を経て8月以降、正式決定する。50年に目指すべき社会像に向けて30年までに必要となる取り組みを網羅しており、政府に具体化を求めた。

プラスチック資源については30年までに再生利用を倍増する既存目標を達成するため、回収量を倍増する。実現手段としてメーカーやリサイクル業者、利用者の連携支援を拡充する。また、再生材とバイオマス素材の価値を向上する表示を整えるなど市場ルールを形成する。

金属について人工知能(AI)を活用しながら使用済み小型家電から回収し、リサイクル原料の処理量を倍増して製品に安定供給する。食べられるにもかかわらず捨てる食品ロスの発生は年400万トン以下にする。現状は2000年度比半減の489万トンを目標とするが、さらに踏み込む。

政府は21年6月、循環経済ビジネスの市場規模を30年までに80兆円以上に引き上げる目標を閣議決定した。工程表は80兆円に向けてデジタルやロボット技術の徹底活用、資源循環に取り組む企業への投融資の拡大、地域の循環経済への移行を掲げた。

価格高騰を受けて資源を海外に依存するリスクが浮き彫りとなり、国内で資源を循環利用する必要性が高まっている。欧州連合(EU)は再利用や修理、共同所有(シェアリング)も含めたサーキュラーエコノミー(循環経済)を成長戦略として推進する。日本の経済産業省も「成長志向型の資源自律経済」とし、経済安全保障に循環経済を位置づけた。大手コンサルティング会社のアクセンチュアは、30年までに世界の資源循環の市場規模が540兆円になると予測する。

日刊工業新聞2022年7月7日

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