廃鉱山の有害金属除去、JOGMECのSDGs
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、鉱山の坑廃水に含まれる有害な金属を取り除く技術の実用化を進めている。もみがらや米ぬかにより微生物が活性化する仕組みを利用し、亜鉛やカドミウム、銅などを除去する。国内には鉱山が非常に多く、坑廃水の処理ではコストが課題だった。機械設備や薬品を極力使わないことから、電力や環境負荷の低減につながりそうだ。
JOGMECは東北地方の休廃止の鉱山で同技術を使った実証実験を2020年夏に始めた。通水量が毎分100リットルで、厳冬期でも配管凍結などの不具合もなく、処理が継続することを確認したという。金属環境事業部の濱井昂弥特命調査役は「技術面で(実用化の)めどがついている」と手応えを感じている。
JOGMECが導入を目指す同技術が、坑廃水処理の新たな切り札になる可能性がある。反応槽(バイオリアクター)にもみがらや米ぬかなどを入れると、それらを栄養源に「硫酸還元菌」と呼ばれる微生物が活性化する。これにより有害金属を硫化物として除去する仕組みだ。坑廃水に鉄が多く含まれる際には、鉄酸化細菌で鉄を取り除く工程を前処理として取り入れる。
「自然の力を使う」(濱井特命調査役)ことで、薬剤の添加や動力を用いた撹拌などが不要。二酸化炭素(CO2)の排出削減も見込める。もみがらと米ぬかの入れ替え作業も5―10年に1回ほどで済むとしている。
国内には金や銀などを採掘していた鉱山が多い。採掘が終了した現在でも旧坑道などから有害金属を含む坑廃水が流出する場合があり、鉱害防止のために適切に処理される一方、コストが長期間にわたってかかるのが課題だ。
JOGMECは同技術に関連する知見の蓄積を目指すほか、鉱害防止対策の最新技術を盛り込んだガイダンスも公表した。自然の浄化作用を生かした坑廃水の処理ニーズは今後も高まる見通しで、同技術の実用化が期待される。