富士通が予測する技術トレンド、今後10年の主要テーマとは?
富士通は、“未来への羅針盤”と位置付ける「富士通テクノロジー・アンド・サービス・ビジョン(FT&V)」の2022年度版をまとめた。13年度以降、毎年策定しており、10周年となる22年度版ではこれからの10年間を展望。「デジタル変革(DX)によるサステナブル変革(SX)の推進」を同社が歩むべき道として明確化した。併せて、技術動向の年次調査「グローバルSXレポート」をFT&Vの裏付けとして公表した。
SXレポートは日本を含む世界9カ国・1800人の経営層らを対象に行った。これによると、全体の60%が「過去2年間で経営におけるサステナビリティー(持続可能性)の優先度が高まった」と回答。さらに41%がサステナビリティーを「トップ3の経営課題」に挙げた。
背景には「ESG(環境・社会・企業統治)への関心に加え、パンデミック(感染症の大流行)や地政学的なリスクなど、不確実性の拡大がある」(富士通技術戦略本部)という。
SXへの取り組みは企業によってバラつきがあり、回答者の21%が既にSXの成果を実現しつつある一方で、SXの全社戦略を策定・実践して「大きな成果を上げている」企業がわずか5%にとどまることも分かった。また、54%の企業は、全社的なサステナビリティー戦略の立案や実行に取り組めていない状況なども判明した。
SX実践の具体例では社内のバリューチェーン(価値の連鎖)全体における二酸化炭素(CO2)のモニタリングや工場の現場作業員の安全確保、リサイクルによる廃棄物削減などを挙げた。
また、全体の67%が「DXの推進がSXの実践と成果の創出に寄与する」と回答しており、SXの成熟度とDXの成熟度に強い相関関係があることも確認した。
DX×SXは今後10年間に取り組むべき主要なテーマともいえるが、「SXの推進が企業の利益と相反する状況」もあらためて浮き彫りとなった。SXの実践は短期的には投資となるが、長期的な視点と取り組みが必要。具体策としては「経営最高責任者(CEO)が指導力を発揮し、財務と非財務から成る目標を含む計画を策定し、技術パートナーとともにデジタル技術を活用することが有効だ」(同)としている。
FT&VではDX×SXを含め、今後の技術トレンドについて予測。例えばインターネットについては、デジタル・エクスペリエンス(体験)と、デジタルツインの二つの方向への進化について言及する一方で、今後10年間では「二つの進化が収斂(しゅうれん)し、リアルとデジタルが完全に融合したボーダーレスな世界が実現する」と予測した。