米アルファベットが産業用ロボット本格参入
米グーグルの親会社の米アルファベットが産業用ロボット市場への本格参入を進めている。同分野のソフト開発子会社である米イントリンシックの設立に続き、4月にはイントリンシックが産ロボ向け人工知能(AI)ソフトの米ビカリアスを買収することで合意したと発表。さらにビカリアスは、アルファベット傘下で先進的なAI企業として知られる英ディープマインドとも共同で研究開発を実施するという。(藤元正)
アルファベットは2013年、日本のシャフト(当時)や米ボストン・ダイナミクス(現在は韓国・現代自動車の子会社)といったロボット企業を買収した経緯がある。だが事業戦略やリーダーシップの不足から相乗効果を発揮できず、その後各社を売却し、ロボ事業から事実上撤退した。今度は得意とするAIを切り口に、産ロボに絞り込んでの事業再立ち上げとなる。
イントリンシックは、アルファベットの次世代技術開発部門である「X」(旧グーグルX)から独立する形で21年に設立された。また10年設立のビカリアスは知能化ロボットとAIにより、さまざまな産業向けにRaaS(サービスとしてのロボット)を提供する。事前学習なしでも対象物をしっかり保持して作業をこなせる上、サイクル時間も短く、ほぼダウンタイムなしで段取り替えが行えるという。
ビカリアスは著名な起業家や企業から多大な支持を受けていたことでも知られる。米メタ(旧フェイスブック)最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏や米テスラCEOのイーロン・マスク氏、サムスン電子などから累計2億5000万ドル(約337億円)を超える資金を調達していた。
イントリンシックによるビカリアスの買収に伴い、ベンチャーキャピタル(VC)を通じてビカリアスに少額出資をしていた複数の日本企業は株式を手放す。米VCのペガサス・テック・ベンチャーズがビカリアスに対し、数億円を投資していたもので、アイシングループ、セガサミーホールディングス、イノテックなどが出資者となっていた。
一方、ディープマインドとの共同開発にはAIおよび神経科学の研究者でもあるビカリアスの最高技術責任者(CTO)率いるチームが参画する。
ディープマインドは、さまざまな種類の情報を利用しながら一つのニューラルネットワークで高度なマルチタスク処理が行えるAIプログラム「Gato(ガトー)」を発表したばかり。対話や画像認識のほか、ゲームをプレーしたり、協働ロボットのアームでブロックを積み上げたりできる汎用性の高さが話題となった。
アルファベットの収益の柱はインターネット広告。さらにグーグルやディープマインドの得意なAIを軸に、クラウドサービスやスマートフォンも含め事業領域の拡大を進める。産ロボでもAIによる「民主化」を掲げ、中小企業など中長期での市場獲得を狙いにしているようだ。
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