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【ディープテックを追え】スピードを速めた3Dプリンターで少量多品種生産の利用を狙う

#84 グーテンベルク

使い勝手の悪さから現場での普及が中々進まなかった3Dプリンター。だが、ここに来て、これまでの課題を解決した製品が登場。積層物の大きさや素材の縛り、スピードなどの欠点を補った製品が普及を推し進めそうだ。グーテンベルク(東京都大田区)は従来よりも積層スピードを大幅に速めた3Dプリンターを開発。少量多品種の部品製造での活用を目指す。

強みは速さ

複雑な構造物を一点の部品から作れるメリットがある3Dプリンター。高付加価値な製品では適用例が増えてきた。ただ、普及には課題もある。一つが積層のスピードだ。樹脂や金属を熱で融解し、積層する熱溶解積層(FDM)方式では、段階的に冷却しながら積層する。そのため構造物を製造する時間が長くなっていた。

グーテンベルクゼロ(G―ZERO)

グーテンベルクが開発した3Dプリンター「グーテンベルクゼロ(G―ZERO)」はこの課題を解決した製品だ。特徴の一つがプリントヘッドのスピードだ。カギを握るのは材料を溶かして、吐出する「エクストルーダー」の軽量化だ。既存の3Dプリンターでも大型のモーターを使えば、エクストルーダーの加速度を上げることはできる。ただ可動部の質量が重いと、加速させた際のヘッドのブレが大きくなってしまう。そのためスピードを上げると造形精度が下がるというトレードオフの関係性にあった。同社はエクストルーダーを構成する部品を3Dプリンターで作成するなどして軽量化。ヘッドの最高到達速度は毎秒約500ミリメートル、加速度は最大2万ミリメートル毎秒毎秒と速めた。エンジニアの山口 勇二さんは「従来製品と比較して10倍以上速い」と説明する。ヘッドの速さだけが積層の速さを決めるわけではないが、「これまでよりも3~4倍速く積層できる」という。造形可能エリアは250ミリ×210ミリ×200ミリメートル。

同製品が動く様子

「これまで使われていなかった場面での利用」を目指す

この利点を少量多品種の部品製造でいかす。同分野は量産するにはコストメリットが少なく、従来の3Dプリンターでは時間的コストが課題だった。同社は従来よりも速く積層することで、コストメリットを打ち出す。李丞株社長は「このスピードで積層できれば用途は広がる。時間がかかるから3Dプリンターを使っていなかった場面に訴求したい」と話す。企業に加え、学校などでの導入も視野に入れる。価格は約100万円(税別)で、2022年度は75台の販売を予定。23年度には200台の販売まで伸ばす計画だ。製造では金属加工の極東精機製作所(東京都大田区)などと連携する。印刷速度や品質を最大化するサポートも行う。

同製品で作った積層物

将来は同装置のユーザーがコミュニティーを作り、知見を深めることを構想する。これを体現するため、オープンソースのソフトウエアを採用した。山口さんは「ユーザー同士の知見の共有が3Dプリンターの普及には必要だ」と狙いを話す。今後もハードウエアとソフトウエアにより積層スピードを高める改善を行う。


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