原子力機構が地下水の流れを水質で判断する手法を開発、放射性廃棄物処分に一役
日本原子力研究開発機構の望月陽人研究員と石井英一研究主幹は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に向け、地下水が現在流れているかを地下水の水質から判断する手法を開発した。地下の割れ目の水と周囲にある水の水素・酸素安定同位体比を比較し、割れ目に沿った水の流れを推定する。放射性廃棄物の処分地選定や処分時の定置位置の設定などに役立てられる。
地層処分では、放射性物質の移動が起こりにくい領域の選定が求められる。地層中には割れ目があり、地下水は割れ目を優先的に流れる。
割れ目に沿った水の流れがあれば、割れ目の水は周囲の間隙(かんげき)水より地表水に近い組成となる。一方、割れ目の流れがなければ、割れ目の水と間隙水はほぼ同じ組成になる。
これを利用し、ボーリング孔の割れ目水と間隙水を調べ、水素・酸素安定同位体比を指標に流れの有無を判別できることを示した。
また、割れ目の連結性が高い領域でも、水が流れていない領域が存在することが分かった。閉じられた環境として地層処分に使える可能性がある。
日刊工業新聞2022年6月14日