EV車体を軽量化、ダイヘンが樹脂と金属の異材を接合する技術を開発した
ダイヘンは電気自動車(EV)の車体軽量化ニーズに対応した、樹脂と金属の異材接合技術を開発した。電費やデザイン性を向上するため、今後は車体に樹脂が多く使われる傾向にある。新開発のレーザー接合法により、ポリプロピレン(PP)やポリフェニレンスルファイド(PPS)の樹脂と、超高張力鋼板(超ハイテン材)など金属との安定的な線接合を業界で初めて実現。2023年度上期の製品化を狙う。
技術開発本部と溶接・接合事業部が約1年かけてプロセスを開発した。接合対象のワーク(加工対象物)をロールで加圧し、レーザー照射する機構ユニット(写真)を試作した。同ユニットをダイヘンの産業用ロボットに組み込み実用化する。
開発したレーザー接合法は3工程で行う。レーザーヘッドで金属表面に微細な溝パターンを付け、金属溝加工部と樹脂表面に大気圧プラズマ処理で表面処理を行い接合面を清浄化し、金属側からレーザー照射し加圧しつつ接合する仕組み。
接合部材の引っ張り試験で、接合部でなく樹脂母材の破断を実現し、実用化に耐える高強度接合を確認した。樹脂と金属の接合は接着剤や化合物を用いた方法や、射出成形、リベット締結がある。ただ各工法は加工の手間やコスト増などそれぞれ課題があるという。
ダイヘンは現状の生産設備を生かし、超ハイテン材同士の溶接や、鉄とアルミニウムの異種金属溶接をここ数年で実用化してきた。今回の異材接合を含め「他社にない複数の溶接・接合技術を提案し、EVの車体軽量化で貢献を図る」(上山智之常務執行役員技術開発本部長)方針。
EVは電池容量の拡大で小型車でもガソリン車の中型車並みの重量になることも考えられ、軽量化技術が求められる。ボンネットやドア、ルーフ、リア部などで樹脂が採用される可能性がある。
日刊工業新聞2022年6月7日