万博・IRに関心ある?独自調査で分かった関西有力企業の本音

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万博の会場イメージ図(2025年日本国際博覧会協会提供)

2025年に大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)で開催予定の大阪・関西万博まで、あと3年。日刊工業新聞社大阪支社(4月から西日本支社)は「関西の有力企業アンケート(49社回答)」を実施し、万博や同地での開業が検討中のカジノを含む統合型リゾート(IR)について、関心度合いなどを調査した。万博への関心が圧倒的に高く、継続的に関わりたいとの声が多かった一方、IRへ6割が関心を持つものの、課題も浮き彫りとなった。

関心度、万博とIRで温度差

アンケートでは万博に「関心がある」と答えた企業は92%で、「関心がない」と答えた企業はなかった。一方、IRについて「関心がある」と答えた企業は59%に留まり、「どちらともいえない」が3割を占めた。ともに大規模建設を伴うビッグプロジェクトだが、3年後に開幕を控える万博と、29年以降の開業を目指すIRとでは、企業の関心度に差があることがみてとれた。

万博への関わり方

万博に「関心がある」企業のうち、「自社技術や製品・サービスを会場で披露する」と答えた企業が47%と最も多く、万博をビジネス拡大のチャンスと捉える企業が多いことがうかがえた。

万博会場に設置するパビリオンについては「プロデューサーのテーマ事業に参画」が18%、「大阪パビリオンなど地元自治体館に参画」が11%、企業館を含む「パビリオン出展」が7%だった。大阪府・市が公開する都市連動型メタバース(仮想空間)「バーチャル万博」は2月の“街開き”からまだ日が浅く、参画すると答えた企業は4%に留まった。

IRの経済効果を期待するも、負の側面へ懸念も

IRに「関心がある」企業のうち「関西全体の活性化」を理由に挙げた企業は86%で、経済効果への期待の高さがうかがえた。一方、「ギャンブル依存症などカジノがもつ負の側面が懸念される」との回答が全体の45%を占め、慎重姿勢を示す企業が一定程度あることが前向きな印象の万博と対照的だった。建設時の経済波及効果額1兆5800億円、運営時には年間で同1兆1400億円とされる経済効果自体に疑問を持つ企業も全体の1割あった。

自社の変革へ 重要課題は脱炭素とDX

自社の変革に向けて取り組む重点課題について、「グリーンイノベーション(脱炭素へ向けた環境対応)」と回答した企業の全体に占める割合と、「デジタル変革(生産性向上などDX)」の同割合は、どちらも78%だった(複数回答)。企業の脱炭素化や労働生産性の向上については、2月8-9日に開催された第60回関西財界セミナーでも議論されており、関西企業にとって注目分野であることが裏付けられた。

その他では、ESG(環境・社会・企業統治)経営の推進や、新事業・新技術の創出、物流の自動化・効率化を重点課題として捉える企業があった。

また、選択肢として挙げた分野について、全て重点課題と答えた企業も複数社あった。

日本総合研究所調査部関西経済研究センター長・若林厚仁氏に聞く

          

今後の関西経済に大きな影響を与えるとされる「大阪・関西万博」や「カジノを含む統合型リゾート(IR)」。万博は2025年に大阪・夢洲で開催され、IRは国から選定はされていないが大阪は有望視されている。関西のビッグプロジェクトの動向を幅広い視点で追う、日本総合研究所調査部の若林厚仁関西経済研究センター長に、アンケートの結果を踏まえ、関西経済の現状や展望を聞いた。

―今回の企業アンケート結果の率直な感想を教えてください。
 「アンケートから、大阪・関西万博に対し、改めて関西企業の関心の高さが伺えた。自社の技術や製品、サービスを万博会場で披露したいとの思い、また大阪・関西を盛り上げようという気合いを感じた。『関心がある』が92%という数字はそれを裏付けている。大手を中心に万博・IR推進室のような専門部署を立ち上げたところも出ている。ただ具体的に万博にどうかかわるかは、まだ手探りのところも多い。IRについては、大阪が候補地として決まっていない段階なので、様子見をしている感がある」

日本総合研究所調査部関西経済研究センター長・若林厚仁氏

―関西で万博への熱意は何故できていると思いますか。
 「1970年に大阪で開催された万博をピークに、日本経済に占める関西のシェアはずっと低下傾向をたどってきた。70年頃の関西はGDPで日本全体の2割ほどを占めていたが、じりじりと下がり、今は15%程度だ。関西経済界の共通認識として、長期低迷にあえいだ関西をどう浮揚させるか。その起爆剤に万博をいかに活用するかという思いがある」

―企業の万博へのかかわり方をどう見ますか。
 「万博は『未来社会の実験場』をコンセプトに掲げ、多くの企業にとって自社の技術や製品、サービスのPRを狙う絶好の機会となる。空飛ぶクルマなど新しい技術にも挑戦している。一方、中小企業を中心にどう関わっていいのか、よく分からないとの声も聞く。自社のビジネスとどう結びつくのかといった疑問が率直にある。日本国際博覧会協会も企業に寄付を筆頭にボランタリー精神を強く訴えている感がある。一方で、中小が関われる仕掛けも万博では用意されており、それらの情報をきっちり伝えていくことが大事だ」

―万博の認知度は、首都圏など関西以外では低いようですね。
 「確かに首都圏などの反応は薄い。われわれの会議で万博のことを話題に出しても質問は出ず、「ふーん」という認識だ。万博は国家プロジェクトであり、これから全国的な機運醸成をどう作り上げていくのかは大きな課題になる。万博を半年間のお祭りで終わらせるのでなく、関西経済にとって重要で、その後のことも検討しないといけない」

―万博後に会場となる夢洲の活用でIRが提案されています。
 「IRが大阪に決まるかどうかは、万博終了後の夢洲(ゆめしま)の跡地活用に大きくかかわってくる。鉄道や道路のインフラ整備、多様な施設の建設など経済効果でみれば、万博よりIRのほうが大きい。一方で、IRはカジノに対してギャンブル依存症への懸念などが根強く、治安対策も含めた対応は重要になってくる」

―関西の経済・産業動向をどう見ますか。
 「コロナ禍前まで、関西経済はインバウンド(訪日外国人客)が活況で盛り上がっていた。インバウンドは弊害も指摘されるが、人口が減少していく中で外貨を稼げる大事なものだ。これが戻ってきたら大きな柱になる。関西で強みをもつ製造業の強化や、弱点のデジタル分野をいかに強化していくのかは課題。ベンチャー育成も重要で、ライフサイエンス系を筆頭に大学や研究機関の集積があることから、ディープテック系ベンチャーを生み出してもらいたい。多くの企業にとってデジタル、脱炭素への対応は重要となる。人が成長分野へシフトしやすいようにすることも大事で、例えば、大阪府立大学と大阪市立大学が統合し4月に誕生する大阪公立大学が、企業と共同で講座を作り必要な人材育成につなげる仕掛けなどができればおもしろい。大阪はモノづくり、中小企業のまちの側面もあるので、デジタル化・脱炭素への対応に乗り遅れることなく進めてもらいたい。変われる力はあると思う」

【執筆;大阪支社(4月から西日本支社)編集局 広瀬友彦・大川藍・小野太雅】

◎アンケート回答企業一覧(49社)
アシックス 岩谷産業 エア・ウォーター NTT西日本 NTN 大阪ガス 川崎重工業 関西電力 京セラ  近鉄グループホールディングス クボタ グローリー グンゼ  栗本鐵工所 クラボウ 京阪ホールディングス  コクヨ 小林製薬 サントリーホールディングス 塩野義製薬 シスメックス シャープ 住友電気工業 積水ハウス センコーグループホールディングス 大和ハウス工業 ダイハツ工業 大日本住友製薬 ダイキン工業 ダイヘン  大建工業 宝ホールディングス 椿本チエイン 東洋紡 南海電気鉄道 日本ハム 阪急阪神ホールディングス パナソニック 日立造船 プロアシスト フジキン 堀場製作所 ミズノ 三ツ星ベルト 村田製作所 山善  ユニチカ りそなホールディングス ワコールホールディングス  

日刊工業新聞2022年3月31日

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