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経産省が資源循環経済の政策を再構築する方針を打ち出した

経済産業省は資源循環経済の政策を再構築する方針を打ち出した。工業用品や消費財などの需給の逼迫(ひっぱく)が続く可能性を踏まえ、物資や資源の供給制約への対応力を高める。岸田文雄政権は経済安全保障を重視しており、同様の視点で資源循環経済のあり方を検討する見通しだ。環境負荷の低減や廃棄物対策に加え、自律性の確保が焦点となりそうだ。

「サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化の視点を入れる」。経産省幹部は資源循環経済の方向性をこう説明する。

資源が乏しい日本が自給率を高めるのは難しい一方、ロシアのウクライナ侵攻で供給制約のリスクが顕在化している。特にエネルギー価格が上昇し、影響が広がっている。

経産省は物資や資源を特定の国に依存し、経済の脆弱性が高まることへの危機感を背景に、同経済の政策を再構築する必要があると判断した。例えば、リサイクルなどで対応しきれない領域で、供給途絶を念頭に置いた対策を視野に入れる。

経産省は具体的には四つのテーマを設けて検討する方針だ。「資源の生成」はその一つで、細菌や細胞を用いたバイオ生産技術に着目する。排出される二酸化炭素(CO2)や廃棄物を原料に、同技術を生かすことで高性能の素材や製品を製造でき、輸入に頼っていた資源の代替を見込める。そのためCO2の削減効果を評価する規格など、普及を後押しする制度のあり方を検討する見通しだ。

欧州ではサーキュラーエコノミー(循環型経済)に関連する政策が進んでいる。2020年に示した行動計画では電子機器・情報通信技術(ICT)機器やプラスチック、繊維など七つを重点分野に特定し、規制と資金支援を重視している。

一方、経産省も同年に公表した「循環経済ビジョン2020」で「大きな方向性は示している」(幹部)という。国際競争力を維持するためにも、同経済の政策の具体化が求められる。

日刊工業新聞2022年5月27日

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